「エース隊長?さっきでかいライオン見つけて追いかけて行ったぜ。今日の晩飯にするって張り切っててよお」 船の見張りで残った仲間たちに聞いたが、どうやらnameと一緒に上陸する相手は残っていないらしい。 「はあ……」 ため息を吐いて見る先には、鬱蒼としたジャングルが広がっている。 そう、ここは夏島、それも緑豊かな熱帯の島だった。 どうりで、ここ数日スコールが続いたわけだ。 気温、湿度ともに高い気候のせいで、ベタつく肌が不快な気分にさせた。 頭上では色鮮やかな鳥が木々の間を飛び交い、足許には異様な形をした虫が行き交っている。 それに加え、遠くのほうで何か獣の鳴き声が聞こえるではないか。 とても一人で入るのは躊躇われるような場所だ。 しかし彼女は、長い船上生活に退屈していたため、外に出たいという気持ちのほうが強かった。 出航までの時間もあまりないと聞いていたため、尚更足を止める気にはならない。 「遠くに行かなかったら、大丈夫」 自分に言い聞かせるようにして、ジャングルの中を進んでいった。 ***** 何故大人しく船に居なかったんだろう、とnameはさっきの自分を恨んだ。 仲間の一人が言っていたではないか、「エースはライオンを追いかけて行った」と。 つまり、このジャングルにはライオンがいるのだ。 「ふっ……ふっ…はっ………」 結構な重量の足音が、物凄い速さで迫ってきていた。 今まさに、彼女はそのライオンに獲物として目をつけられ追われているのだ。 アライグマの姿で、木々や背の低い植物の間を抜けて疾走している。 植物が絡み合うようにしているこの場所では、人型では走りにくかったのだ。 走りすぎて、喉が焼けるようだった。 もう限界は近い。 しかし、背後に迫る獣の足音が、nameを追い上げてくる。 足を止める訳にはいかなかった。 「キュッ!?」 急に脚が軽くなって、思わず一声鳴いてしまった。 軽くなった、というのは不適切だろうか。 足に自分の体重を感じなくなったのだ。 植物が開けて崖のようなところに差し掛かっていたらしい。 それに気づかず、nameは飛んだのだ。 眼下に広がる緑の海に、紛れて白いものがチラチラと目についた。 (しろい、くま…?) このジャングルにはお世辞にも似合わない白熊が、何故かつなぎを着て歩いていた。 いや、そもそもこのジャングルはライオンがいるくらいだから、白熊が居てもおかしくないのか。 変に納得しながらも、nameの体は加速しながら地面へと向かっていく。 内臓が浮き上がる気持ち悪さと、全身を捉える風を感じながら、意識を手放した。 ――――――――――――――――― あの曲が頭から離れません… In the jungle, the mighty jungle The lion sleeps tonight〜♪ ← | → main |