誰かが大声を張り上げて、船はたくさんの雄叫びに包まれる。 そのおかげで、昼頃まで眠っていたnameは目を覚ました。 まだボヤける目で辺りを見回す。 上陸ということは、この部屋にはもう誰もいないはずだ…… 「う!?」 「う、ってなんだお前」 何故か呆れ顔のリックが、枕元に座っていた。 しかしすぐに気をとりなおしたのか、nameを真剣な眼差しで見て、口を開いた。 「これからは晩飯食ったらまっすぐ部屋に戻ってこい」 「は、はい…」 「遅くとも、9時だ。それ以降の外出は認めん」 「はあ…」 どこの頑固オヤジだと言いたくなるような口調で、いいな、とリックは言う。 nameは何がなんだかわからなかったが、その勢いに負けて、はいと返事をしてしまった。 「じゃあ、俺はイゾウと約束があるから先に行くぞ」 「またお酒ですね」 「おい、そんな目で見るな」 イゾウとリックは、仲間内でも群を抜く酒豪で有名だ。 そのせいか自然と行動をともにすることが多く、島に着けば酒場や酒屋巡り歩くことが度々あるのだ。 「お前はエースかサッチと行くんだろ」 よっこらせ、とリックはオヤジ臭いかけ声で立ち上がった。 「そういう問題じゃあ…」 リックは小言は御免だといった雰囲気で、ひらひら手を振ってそそくさと部屋を出ていった。 一瞬光を通した扉はパタン、と小さく音をたてて閉まった。 「……ないんですけど」 最後まで聞いてもらえなかった言葉は、薄暗い部屋に吸い込まれていった。 ← | → main |