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翌朝、彼女はいつもより早く食堂へ来ていた。
急に空模様が変化するせいで、仕事がほとんどできないからだ。
無理やり仕事をしたとしても、昨日のようにマルコにお世話になってしまう。
そんなことになるくらいなら、洗濯なんてしたくないと思ったのだ。

早く来たと言っても、人の多い時間は避けて来たため人はまばらだ。
そんな中食事をとっていると、一通り厨房での仕事を終えたサッチが声をかけた。

「nameじゃねえか、今日はバカに早いな」

「気候が安定しないんで、洗濯できないんです」

「なんだサボリかー」

「ち、違いますっ」

ちょっとからかっただけで頬を膨らますnameを見て、サッチの顔がだらしなく緩んだ。
サッチはどうしようもなく、この末の妹が可愛いのだ。

「おいサッチ、用ってなんだ」

ピーピー騒ぐ名前の声を遮るように誰かが声をかけた。
声の主は、彼女と同室であるリックだ。

「お宅の隊長さんに飯届けてほしいんだよ」

「なんでわざわざ届けるんだ」

「風邪ひいたんだと」

「…不死鳥だろ?」

「馬鹿も風邪ひくみてえに、不死鳥も風邪ひくんじゃねえか?」

「なんだそりゃ」

理解できねえ、と首を傾げるリックに奥から持ってきた粥と水の乗った盆を差し出すサッチ。

そう、実はリックという男は1番隊に所属しているのだ。
普段あまりマルコと顔を合わせたがらない彼は、たまにこうした嫌がらせを受ける。
しかしもうそれも馴れたもので、ため息をついて目の前に置かれた盆を見た。

すぐ横で粥が出てきたのを見たnameは、サアッと血の気が引いたような顔で立っていた。

(隊長さんが、風邪…?)

考えられる原因はひとつしかない。
あきらかに昨日の洗濯物を取り込んだ後のアレだ。
いくら不死鳥といえど、仕事で疲れが溜まっていた上にずぶ濡れのまましばらくいれば風邪もひくということだ。

頼んだ訳ではないが、そう、ほぼ無理やりだったのだが、手伝ってもらった上に世話までやいてもらったのだ。

なんだか、すごく、申し訳ない…。


「それ!私が持って行きます!」

「おお、頼んだ」

「え、ちょっと待ってそれはリックが…」

「俺はまだ了解してねえ」

「いいです、私が行きます」


nameは自分の食べ終えた食器をさっと片付けて盆を持った。


「だとよ」


それを見てざまあみろ、と言わんばかりの雰囲気で言い放ったリック。
鼻で笑って小馬鹿にしたが、随分落ち込んだ様子のサッチは気付かない。


「そんな…name…」


盆を持って足早に去っていく彼女の後ろ姿が、涙で滲んだ。

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