「…あの、ごめんなさい」 本日何回目かわからない謝罪の言葉を背後から聞いた。 洗濯に失敗したのがそんなにいけないことなのか、マルコにはわからない。 しかしもう耳にタコだ、と思いため息が出そうになるのを抑えた。 ため息なんて出してみろ、また名前は申し訳なさそうに謝るだろう。 特に会話が弾むわけでもなく、洗濯場に着くと鈍い音をさせながら籠を床に置いた。 「ここでいいのかい?」 「あ、はい!ありがとうございますっ」 nameは必死にビチャビチャの頭を下げた。 マルコは謝罪以外の言葉をこいつは喋れたのか、と目を見開く。 何せここんとこ避けられっぱなしで、まともに話もしてなかったのだ。 そう思っても仕方ない。 チューリップ帽からはみ出たnameの髪からは、ポタポタと水滴が垂れていた。 彼女の居るところには小さな水溜まりができている。 それを見て全身ずぶ濡れのくせに、ほっこりと暖かい気持ちになった。 マルコはふっと笑みを零す。 「ほら、また風邪ひくよい」 そう言うやいなや、彼はnameから帽子をむしり取った。 そしてそこらへんに畳んであったタオルを代わりに被せ、そのままワシャワシャと髪を拭いてやる。 「あ、のっ!隊長さん!」 「じっとしてろい」 nameは逃げようと必死に抵抗する。 しかし大の男に頭を両手でガッシリと掴まれていては到底無理だ。 「すみません、」 「…(ちっせえ頭だい)」 「あの、隊長さん?」 「…(簡単に潰せそうだよい)」 「あのー…」 nameの声は、どうやら届いていない。 ぼんやりと何かを考えながら手を動かすマルコを見て、彼女は逃げることを諦めた。 そしてその結果、延々と髪を拭き続けられることとなるのだった。 ← | → main |