結局イゾウの言っていたことが気になって、仕事どころではなくなってしまったのだ。 この船で洗濯をするものなど、ひとりしかいない。 …そう、マルコが毛嫌いされている彼女だ。 ちなみに毛嫌いというのは、マルコの個人的な見解である。 まあしかし、彼がそう思うのも仕方ない。 かれこれひと月まともに話すらしてもらえていないのだから。 かの不死鳥マルコが小娘すら相手にできないなど、なかなか滑稽なものだ。 それはともかくとして、彼は早々に甲板への出口に着き少々乱暴に扉を開き外に出た。 すると途端に雨が降り出しマルコは一瞬で濡れ鼠と化す。 つくづく運の悪い日だと、舌打ちしながら彼は恨めしげに目を細めた。 良くも悪くも、航海士の予報通りの天気である。 遠くの海は晴れているが、ここら辺りだけ強い雨が降っている。 まだしばらくは止まなそうだ。 (さっさとあのバカんとこ行くか) マルコはさっさと物干し場となっている所へ足を向けた。 途中誰かとすれ違っても、全く目に入らないようだ。 そして物干し場には案の定あのバカ、つまり名前がいた。 もうすでに濡れきってしまったシーツを必死に取り込んでいる。 雨のカーテンの向こう側に見る彼女は、何故か別世界に居るようでマルコは不思議な気持ちになった。 ← | → main |