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じとり、と湿気の多い日が続いていた。
甲板は木が湿気を吸って、歩くたびにいつもより鈍い音がする。
今は晴れているが、突然スコールのような雨が降ることが多いので油断ならない。

(ありゃ今日もやられるな)

船縁に寄りかかって煙草をくゆらせているリックは、ぼんやりとそんなことを思った。
視線の先には、シーツがはためいている。
あのシーツたちは、昨日も一昨日もそのまた前の日もスコールに降られてダメになった。
おそらく今日も例にならって、洗い立てのシーツは台無しになるだろう。

「おーいname、諦めろって」

「いえ、今日こそは!平気!なはず…」

「俺は絶対また降ると思うぞ」

「運良く降らないこともあるかも!」

たとえ運良く降らなかったところで、この湿気じゃあろくに乾かない。
nameが仕事をしていないと落ち着かない性分であると知っているリックは、それ以上止めようとは思わなかった。

「そこで寝てるエース隊長にでも乾かしてもらえばいいだろ」

リックは良い案だという具合で言った。
火拳のエースにかかれば、洗濯物の水気を蒸発させることくらい朝飯前じゃないのか。

「繊細な火加減は苦手みたいです」

「…まあ、だろうな」

もうすでに実践済みだったようだ。
火拳のエースにかかると、シーツが一瞬で灰になるのは容易に想像できた。

新しい煙草に火をつけて顔を上げると、ちょうど船内からマルコが出てきたところだった。
彼を見たリックは苦い顔をし、後頭部を乱雑に掻き上げた。
そしてそそくさとその場を後にしようと船縁から体を離す。

「わっ!」

nameが慌てたような、驚いたような声を上げた。
ポツリと、一粒の水が空から降ってきたのだ。
それを皮切りに、ザアっと雨が降り出した。

今火をつけたばかりの煙草が濡れてふやけてしまっている。
リックはそれを吐き捨てて、船内へと帰っていった。

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