どこか遠くで自分の名を呼ぶ声がする。 「……ぉい…おい!name!」 「…リックさん?」 誰かに肩を揺さぶられて、やっと起きた名前は目をしばたかせた。 どうやら、夢だったようだ。 質の悪い、過去の夢。 夢の中で聞こえた声は、どうやら同室であるリックのものだったようだ。 「お前、すげえうなされてたぞ」 随分心配そうに、自分を見るリックにnameは申し訳なくなった。 なにせ、ただ夢見が悪かっただけなのだから。 「どうした、怖い夢でも見たか?」 「…ごめんなさい」 nameは顔を赤くして謝った。 この年になって怖い夢くらいで心配され、恥ずかしく思ったのだ。 この年になって、という言葉を使うには見た目に違和感のある彼女だが今年で25歳になろうとしていた。 大丈夫だとリックに伝えると、彼は安心したように彼女の寝癖の付いた頭を撫でる。 同じ年なのに、何故か彼にはこうして妹のように接せられることが多い。 名前は特に気にしたふうもなく、いつもそれを受ける。 「朝飯食いに行くか」 その言葉に頷いて、nameは枕元にあったチューリップ帽をかぶった。 ← | → main |