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焦げ茶の毛玉が、一面の銀世界の中を転がるように駆けていった。
それは何かから必死に逃げるように、死に物狂いで登り坂を走っていた。
雪に足をとられてズルリと落ちてしまっても、必死でもがいて先へ進んだ。

「フウッ…フウッ…」

一際高い場所まで来ると森が開けた。
焦げ茶の毛玉、基アライグマは息を整えて後ろを確認するが誰もいない。
ホッと胸をなで下ろし、空を仰いだ。
どんよりと厚い雲に覆われた空は、お世辞にも美しいとは言えない。

(あれ、なに…)

暗い空に、揺らめく青い光を見た。
星かと思ったが、雲の下にある星などあるはずがない。
しかもそれは揺らめきながらどんどんと大きくなっている。
大きくなるにつれてはっきりと見えるようになるそれは、鳥の形をしている。
青く燃える、それは美しい鳥だった。

「キュウッ!」

あまりの美しさに、アライグマは見とれ惚けていた。
ようやっとその青く燃える鳥が真っ直ぐ自分目掛けて飛んで来ることに気付き、小さな鳴き声を漏らしたのだ。
青く燃える鳥に背を向け走り出すが、時すでに遅し。
鋭い鉤爪で捕らえられ、地面から足が離れたのだった。

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