nameは少し先を行くマルコに気づかれぬよう溜め息を吐いた。 何故なら結局2人は食堂へと向かっているからだ。 サッチからマルコには近づくなと注意を受けた手前、彼が居るであろう場に一緒に行くのは気が引ける。 だがしかしマルコに断りを入れるなどできるはずがない。 (でも親父が…) nameはついさっき、親父の部屋へ洗濯物を届けに行ったときのことを思い出した。 マルコについて尋ねていたのだ。 「お前がマルコに興味持つたあ、珍しいじゃねえか」 樽で酒を飲みながら独特の笑い方で笑った白ひげは、自分より大分小さい名前を見下ろした。 「この間あの、初めてお話しして、そうしたらその、とても優しくて、でもやっぱり私怖いと思ってしまって…」 何故だかマルコのことを話すのが気恥ずかしくなったnameは、しどろもどろになりながらも伝えようとした。 そして顔が熱くなるのを感じて、帽子のつばをギュッと下ろして顔を隠している。 「そうか…顔を上げろname」 そう言うと、白ひげは巨大な人差し指で名前の顎を持ち上げ上を向かせた。 「あいつはまだまだひよっこだ。不器用だしな」 「だが自慢の息子だ」 「そしてお前も自慢の娘だ」 「何もビビるこたあねえ」 nameは白ひげの言葉を思い出し、目の前のがっしりとした背中を見上げた。 (大丈夫、だよね) この船に連れてこられた日を思い出すと今でも怖かった。 あの時は獲物と捕食者の関係であり、本当に食われると思ったのだ。 あの青い炎をまとった鳥が、今でも忘れられなかった。 「そんなに見られると、背中に穴が開くよい」 nameの視線に気づいていたマルコは、後ろを振り向いて言った。 しかし急なことに驚き俯いた彼女はすみませんと一言呟くだけだ。 (…またかよい) それを見た彼は、あからさまに溜め息を吐き食堂へ入ったのだった。 ← | → main |