名前はシーツをセットしてまわっていた。 今彼女の持つシーツと洗濯物は一人分。 (大丈夫、だよね…) 昼間の一件で以前よりマルコに対する恐怖心は和らいだものの、まだ不安ではあった。 できることなら、ばったり出くわすことなど避けたい。 目的の部屋へ着くと、nameはドアに耳を近づけ中の気配を伺った。 物音ひとつしないことから、彼もおそらく夕食へ行っているのだろう。 以前の教訓から、一応ノックしてみるがそれでも返事はない。 ホッと息をついてドアを開いたnameだったが、部屋の中を見た途端動けなくなってしまった。 「よお」 マルコは気配を消してずっと部屋に居たようで、ベッドに腰掛けていた。 nameはというと、声をかけられても喉に何かがつかえたように返事ができない。 そんなnameを見て微かに表情を和らげたマルコはベッドから腰を上げた。 「シーツ、敷きに来てくれたんだろい?頼むよい」 「あ、はい!」 自分に対して敵意を感じなかったためか、nameは気を取り直して仕事に取りかかった。 使用済みのシーツを手早く剥ぎ取り、新しいシーツをさっと広げて端をマットレスの下に折り込んでいく。 動きに無駄がなく、とても綺麗な仕上がりだ。 「悪いな、脅かすつもりじゃなかったんだよい」 マルコは枕や掛け布団を整えるnameへ、独り言のように呟いた。 手を止めてこちらを向いたnameは目を見開いた。 正確には帽子のつばに隠れているのでわからないが、そんな雰囲気なのだ。 「この後、飯食いに行くんだろい」 「はい」 「俺も飯、まだなんだよい」 nameはその言葉の意味をすぐ理解できず、しばらくポカンとしていたのだった。 ← | → main |