煙はそこから出ている。誰かが焚き火をしていたのか、と納得するが焚き火の主は見当たらない。 辺りを見回すとどこからか騒がしい声が聞こえてきた。 「おいname!そんなに急ぐと転ぶぞ」 ガサガサと近くの茂みが揺れたと思ったら、芋をくわえたタヌキが飛び出してきた。 続いて両手いっぱいに同じものを持ったエースも追って出てくる。 「エース…何してんだよい」 「マルコじゃねーか!お前も焼き芋しに来たのか?」 「いや、違うが…これはお前のかい?」 焚き火を指差して聞くと目を爛々と輝かしてそうだと応えた。 誇らしげに言うだけあって、ものすごい量の落ち葉である。 どうりで山火事と間違えるわけだ。 「nameと約束してたんだ、この島に来たら死ぬほど焼き芋食おうって」 …name?どこを見渡してもその姿は見つけられないが。 「あいつが一体どこに居るって言うんだい」 「ここに居るだろ」 「いやどこだよい」 「だーから」 ドサドサと抱えていた芋を落とすと、足下にいたタヌキの尻尾を掴んで言った。 「これがnameだよ」 「はあ!?」 間抜けな俺の声と、尻尾を掴まれた間抜けなタヌキの鳴き声が山に木霊したのだった。 ← | → main |