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nameには一体何がおきたのか理解できなかった。
突然息がつまり、背中に衝撃を受けたのだ。
だんだんと息が苦しくなってくる。先程まで持っていた洗ったばかりの洗濯物は驚きのあまり手放してしまった。
妙に視界が明るいのはいつも被っているチューリップ帽も、今はどこかへふっ飛んで行方知れずになった証拠だ。

「人の部屋でこそこそと何してんだい」

「うっ…」

苦しさから滲む視界には、ゆらゆらと金髪が揺れる。
自分に向けられるあからさまな敵意のせいでさらに苦しくなる。

(やっぱり、怖い)

恐怖でいっぱいの頭で、洗濯物なんて気にせずさっさと逃げれば良かったと後悔しても、もう遅い。

「早く言えよい」

「せ…せんたく、を…」

「洗濯?」

マルコは慌てて首を絞めていた手を放した。
足元に散らばった洗濯物(シーツや自分の服)にようやく気づいたようだ。
同時に今首を絞めていた相手は同じ船員、この船で言うところの家族だったのだと知る。
初めて見る顔だが、さすがに船員でない者が自分の服を洗って持って来りはしないだろう。
解放されて咳き込む名前を見て、ばつが悪そうに口を開いた。

「あんまり怪しい動きだったからついやっちまったよい…悪かった」

後頭部を片手で掻きながら謝り、改めて自分よりずいぶん下にある相手の顔を確認した。
短い髪は焦げ茶色でふわりと軽い。前髪はきれいに切り揃えられ、その下にある目は黒く瞳が大きい。
確かにマルコには見覚えのない船員だ。

「あ、いえあのすみません!すぐシーツ敷いて出て行きます!」

掠れた声でそう言うやいなや、落ちていたシーツをひっつかみ古いシーツを一息に引っ剥がすとあっという間に新しいシーツをセットしてしまった。
皺ひとつ残さない完璧な早業だ。
そして一言挨拶し部屋を飛び出したと思ったら、勢いよく扉が閉まる音がしたのだった。

部屋にはぽつねんと帽子だけが取り残されていた。


「…なんだったんだよい」

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