マイ・レディー(跡部)

「おにいさま!」


聞き覚えのある声の方を向けば

フリルのスカートを揺らしながら走って来る可愛い従兄弟を見つけた


中々時間がとれなくて、顔を見るのも久しぶりだ

この可愛らしい従兄弟の父親の誕生パーティーに時間を作って出席したのは

もちろん、なまえの顔をみたかったからだ


「なまえ、大きくなったな」

「あら、れでぃーにたいして、大きくなったなんてしつれいじゃ、ありませんの」

「わ、悪い」

「いいですわ、わたくし、こころのひろーい女になるつもりだもの」

「ああ、今から楽しみだ」




俺は小さな彼女を抱き上げて、ぐるりと廻った

ああ、本当に前会った時よりも重くなった、子供の成長はこんなに早いのか

満足した俺は笑いながら彼女を腕の上に座らせて、ぎゅうと抱きしめた


俺に反して不満足そうな顔をしたなまえは小さな両手で俺を押しのけ、言う



「おにいさまの、こういうところが、いや」

「どういう所だ?」

「わたくしを、子供あつかいするところ!」

「子供扱いなんかしてないだろ?」

「しーてーるー!してるの!」



ジタバタと暴れ始め、彼女は俺の腕から抜け出してしまった

俺の太もも辺りから、コチラをグッと睨みつける

その仕草すら可愛らしいのは、子供だからか、はたまたなまえだからか



「おにいさま、たまに会ったとおもえば、プレゼントぐらい用意してくれてもいいのに」

「プレゼントはねだるものじゃないだろ」

「いいえ、おにいさまの、れでぃーにたいする、ひんせいをうたがっていますの」

「俺にレディーに対する品性がないだと言いたいのか?」

「ええ!プレゼントくらい、よういしておくものでしょう」



なかなか会わない間に小生意気になったものだ

小さくても女だという事を実感させる言葉に、俺はすかさず指を鳴らした


駆け付けた執事に「例の物を」と言えば、「かしこまりました」と返事がくる

その間も、なまえは俺の足下でブツブツ言いながら不貞腐れているのだが

それも、あと少しだけだ


執事が足早に立ち去った後に、他の執事が奇麗に包装された、なまえと同じくらいの大きさがある箱を持って来た

それに気付いた途端、俺に向かって「あれ、なぁに」となまえは瞳を輝かせる



こんなにも人は、瞳を輝かせる事が出来るのか、思わず顔が緩む

そんな顔をされたら、プレゼントなんていくらでも贈りたくなるもんだ

大人の女共に学ばせたい


もしかしたら俺にもこういう時期があったのかもしれない

が、さすがにここまで可愛らしくは無かっただろう


「俺がなまえに会うのに、プレゼントを持ってこないなんて今まであったか?」

「ない!あれ、わたくしに?」

「もちろんだ、お姫様」


箱を執事が丁寧にあけていく、その中にはなまえと同じ背丈のテディベアが入っている

喜んでくれると良いんだが、プレゼントがぬいぐるみで嬉しいのかは俺には分からない


「わぁ!大きなくまさん!」

「どうだ?気に入ったか?」

「ええ!とても!このくまさん、けいごって名前にするわ!」

「くく、それは光栄だ」


執事に大きなぬいぐるみを手渡してもらったなまえは、力一杯ぬいぐるみを抱きしめた

ぎゅうぎゅうに抱きしめられたテディベアは、なんだか苦しそうだが、それも良い


「おにいさま、くまさん大事にするからね」

「ああ、そうだなまえ」

「なぁに?」


俺は彼女の前に片膝をついた

しかし彼女背に合わせるようすると、ほぼしゃがんでしまったが、まぁしょうがない


「手を貸していただけますか、レディー」

「もちろん」


差し出された小さな白い手をとり、あらかじめ手の中に持っていた指輪を彼女の人差し指にはめる

感嘆の声が漏れる彼女を尻目に、俺は用意いていた言葉を言いながら指輪に口付けた


小さなマイレディーへ、最愛を誓います

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