消えてしまえばいい(蓮二)

視界に入らないでほしい

そう心から思ったのはいつの事だろうか






話してる時の少し近い距離も、困った時にすぐ俺の顔を見るのも

遊ぼうと誘ってくれるのも、毎日のようにメールをしたりするのも

その笑顔も、その声も、ひとつひとつが記憶に残っていて

そう簡単には俺の中から消えてくれやしない



でも一番嫌なのは、それを俺が喜んでいる事




好きすぎて、ひとつひとつの行動が目につく

他の人と話しているのに、なんで合間に俺の顔を見るんだ

彼女が他の人と話しているのがムカつく

ソイツなんかより俺の方が全然、仲が良いじゃないか、なのになんで






中等部の時に委員会が一緒だった

たまに話しをする程度だったが、とても好感がもてた



高等部で初めて同じクラスになって、ついでに隣の席にもなった

前よりも数倍、話す事が増えて、一緒に居る時間が増えた


やはり彼女とは気が合うのだ、善くも悪くも

俺は物事を考え込むタイプだが、彼女は天真爛漫で俺が考えもしない事を言う

そこが気に入ったというのもある



そんな彼女を好きになるのはとても早かった





放課後、教室を出る前になまえに呼び止められた

腕を引っ張られるまま、教室の隅に行くと彼女はさも嬉しそうにヒソヒソ話をはじめた




「蓮二、あのね、聞いて」

「ああ」

「実はね、ふふふ、私ね」

「何か良い事でもあったみたいだな」

「ふふふ、好きな人ができたんだ、付き合いはじめたの」




それはもう、可愛い顔をして、彼女はそっと俺に耳打ちをした

その囁き声は俺の頭の中をガンガンと殴りつけたが、俺は知らないフリをするしかない

俺がこんなになまえを思っているのに、こんな仕打ちってあるのか?

他の奴より、誰より、どうみたって俺の方が仲が良いだろ、なのに、なんで



そう思うだけ思って、結局口に出来たのは、こんな言葉だけ



「良かったな」

「うん、ありがとう!蓮二に早く聞いてほしくて、部活の前に呼び止めちゃった、ごめん」

「いや、良いんだ」



そうだ、この日を境に、視界に入れる事がとても嫌になった

だけど彼女はそんな事には気付かないまま、俺の視界へと入り込んでは消えていく


そう思っているくせに

俺の目は勝手に彼女を追いかけていく


彼氏が出来たなまえはとても嬉しそうに毎日を過ごしている

俺との会話の量は少しも変わらない

メールも毎日くるし、遊びの誘いだってくる



それに俺はいちいち返答し、誘われたがまま遊びにも出かける



やっぱりどう考えたって

他の男より、下手をしたら他の女よりも一緒に過ごす時間が長いし

なまえと付き合ってる男よりも、俺の方がなまえと合っているのに

なんで他の奴と付き合うんだ




俺の物にならないなら、どこかへ消えてほしい

それでも俺は笑いながらお前の横に居る



視界に入らなければ、俺の目が彼女を追わなければ

全てが解決する



ああ、彼女が早くこの世から



消えてしまえばいい
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