幸村君が前半の号令をやってくれたので本日残りの日直の号令私はを全てこなす。
ようやく放課後になり帰ろうとした私の周りには人集りができて、帰ろうにも帰れない状況ができてしまった。
あれよあれよと言ううちクラスメートのアドレスが増えていく。
あらかたアドレス交換と自己紹介が終わり、ティッシュをくれた早希ちゃんにお礼を言った。
幸村君にもお礼を言おうと教室の中を見回したが彼は見つからなかった。
キョロキョロと見回す姿を見てか、自己紹介したばかりだが、早速名前が分からない女の子が幸村君は部活に行っちゃったよ、と教えてくれた。
今日のあの出来事のおかげで"氷帝学園からきた高飛車お嬢様"という像が払拭されたらしい。
日直を忘れてしまったおかげで大分クラスに溶け込めた気がするなぁ、よくよく考えたら本当、幸村君のおかげだ。
きっと彼はこのクラスの中心人物なんだろう、彼の一挙一動にクラスメートほとんどが反応していた訳だし。
私が泣いてしまったせいでろくに話も出来なかったけど。
終始、彼は面倒見の良さそうな顔でニコニコと笑ってくれていた。
圭子ちゃんという帰り道が途中まで一緒の子がいて、クラスのことや入学から今まであった、たわいも無い事を話しながら帰った。
私の帰り道の途中に圭子ちゃんの家があり、じゃあまた明日と声を掛け合って別れた。
まだまだ住み慣れない家に帰ると、何だか今日は疲れたという気持ちが急にでて、着替えもせずにソファーの上で寝てしまった。
しかし、それを注意してくれるような人は今はいない。
楽なんだけど、なんか言われないのも寂しいかも。
それにしたっていつもの倍は疲れたなぁ。
そうか、あれだけ泣いたし、人と話すのはパワーがいるんだ。
この2週間、私が逃げていたんだなー、そんな事を考えながら。
眠い、寝ちゃおう。
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「なんだよ、また女漁り?」
「女やけど、ちゃう」
「なんだよそれ!どういう意味だ?」
メール送ってるだけで何で女漁りに繋がるんや、しかも少し軽蔑が入った目線で俺の携帯をがっつり覗いてくる。
俺はそれを避けつつシツコイ真っ赤な髪の毛をぐいっと押しのけた。
マナーがなっていない相方を少し呆れながら、携帯を真剣にいじっていた理由を説明する。
「りんにメールしてんの!いちいち説明せんと分からん奴やな!がっくんホンマに脳みそ磨いたらええんや」
「じゃあ最初っからりんって言えよ!くそくそ!」
「なんで自分にいちいち報告せんとあかんの?」
「だって気になるし、侑士の事きかれた時に答えられねぇじゃんか」
ため息がついて出るとは、まさにこの事に違いない。
真剣な顔をしてる岳人に悪気は一切感じられない。
個人情報流出のニュースとか、こいつは知っているんだろうか?
「そ、そんなん答えんでええやん!」
「・・・え!」
目からウロコが落ちたような岳人の顔を見て、ため息が出る。
「それもそうだよな!くっそー!!なんで俺が侑士の事を言わなきゃなんねーんだよ!!くそー!」
「ほんま、自分で考えるの苦手やな、だから自分は彼女に振られてばっかなんや」
俺の個人情報をペラペラ喋ってんのはやっぱりこいつか、最近やたら的確に言い寄られるんは可笑しいと思うてたとこやし。
中等部ん時はなんだかんだでテニス部の奴か、もれなくりんと一緒におったお陰で言い寄られたりするのも少なかったのに。
勝手に周りが、俺と彼女の関係を勘違いしてくれてた。
が、彼女がそばに居ない今、女の子はアクティブに動き始めている。
「あ、りん、立海なんだろ?どうなんだ、元気してんの?」
「ぜんっぜんメール返ってこうへん」
「侑士だって振られてんじゃん」
「俺とりんはー、そういうー関係やー、ないからー、振られてませーん」
「…ふーん、メールがダメならさ、電話してみりゃ良いじゃん」
「え?ホンマもんの岳人か?たまにはええ事言うやんか」
ほんま電話でもかけてみよか。
今までなん、ほっとんど一緒に居ったからメールに返事無くても別に次の日顔見たら気にならんかったけど。
俺は携帯の連絡先の中からりんの名前を表示して通話のボタンを押した。
携帯を耳に近づける。
何回か呼び出し音がなり、音が切り替わった。
普通、もしもしとか言うやん、無言ってイヤやわー。
「りん?元気か?無言ってなんやねん」
「・・・」
「もしもーし」
「・・・ゆうし?」
「そや、なんや?眠ったるい声だして」
「ねむい・・・」
「ほんまに寝てたんか」
「うん」
「メールみたか?」
「ううん」
「今日な、部活いつもより早く終わってん、今からりんの家行ってええ?」
「うん、鍵あけとくから勝手に入ってきて、多分、私寝ちゃうと思うから。場所わかる?」
「引っ越し手伝ったんやから覚えとるよ。ほな、2時間ぐらいしたら行くわ」
「うん」
通話を切って、携帯をポッケの中にいれる。
荷物をまとめて背負うと岳人が「りんによろしくなー、また明日」と言って手をふった。
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