朝の練習を終えて疲れた俺は教室には向かわず屋上に直行。

最近は真面目に授業に参加していたからそろそろサボるのも良いかと思って屋上まできた。

何より今日の朝練は遅刻したせいか、やけに疲れた。

走りこみすぎなんじゃ、テニスさせろ。



給水塔の上に登り、そこそこ綺麗なのを確認する。

よし、ここなら寝れる、荷物の中からまだ新しいカーディガンを取り出して枕にした。

よし、これで机の上よりもよく寝れるはずじゃ。



風が汗を乾かしていくのも気持ちいい季節になった。

春は良い、追っかけの女子が1番少なくなるし、何より今年から高等部にあがったせいか、教室の中にいても中々居心地が良かったのに。

新しいクラスメート同士、みんな仲良くなろうと必死になっているのを傍観していると2週間ほどたって誰とも仲良くなろうとしていない俺が浮いてきた。


良いんじゃ、俺、部活命。


面倒大キライ、浅いだけの人付き合いもご遠慮したい。

丁度ウトウトし始めた時、俺の眠りはガチャンという扉の音で妨げられる。



誰か来たようだ、まさか追っかけか?まさかまさか。

まぁこの場所に居て、なおかつ寝転がっていたら、まず俺の存在には気付かれないから良いだろう。

自惚れかもしれないが、俺のサボりスポットは人に見つかる度に"仁王くんが居る場所"という噂が出回る。

先生に見つかるわ、女の子が告白しにくるわでなにかと面倒なのだ。


見つかってはいないはずなのに何故か足音は広い屋上の中にある給水塔の方へむかってくる。

ペタペタと足音がどんどん近付いてピタリとすぐ側で止まった。



心臓が無駄にバクバクと音を立てて動いている。

なんじゃなんじゃ、もしかして先生が見回りでもしとんのか?



「ちょっと寒いな・・・」そう聞こえたと同時に俺の心臓がとうとう跳ね上がる。

まるで俺に話しかけとるんかと思うほど耳へとハッキリと声は通った。



「もう一枚羽織ってくるんだった・・・」

「さむい、びっくりさむい」

「・・・さむい」



そう続けざまに声が聞こえて、これは俺にかけられた声では無い事を判断する。

寒いなら教室に戻ればいいのに、俺はお前さんのせいで動くに動けんじゃろが。

まぁ、どうせ昼まで寝るつもりだから動く気は無いんじゃけど。



その状態がどれくらい続いたのだろうか、何の音も聞こえなくなっていた。

お化けとかだったらどうしよう。



全部俺の空耳か?疲れたとは思っていたが本当に疲れとるのかもしれん。

急遽心に湧き上がったお化け説を否定するためになるべく音をたてないように起き上がった。


声がした方を覗きこむと立海の制服を着て体操座りしている女の子が居た。


なんだ、女の子か。


お化け説撤回。





しかし女の子は縮こまった体操座りのまま、ちっとも動かない。

お化け説復活。



俺は覗き込んだままの状態で「ぷりっ」と声をかけた。

反応は特になし。


枕に使っていたカーディガンを女の子の傍に投げてみる、カーディガンは音もなく女の子のすぐ傍に落ちたが反応は無し。


なんで動かんの?寝てんのか?

地縛霊とかじゃないだろうな。

こうなったら目の前まで行こう、なんて目覚めが悪いんだ。

ハシゴ降りてる途中で消えとったらどうしよう。

お化けメッチャ怖い。

確かめないと今日からずっとあのお化けに付きまとわれる気がする。



梯子を降りて反対側へ周る、まだ新しく見える制服を着た女の子が体操座りしていた。




「生きとる?お化けじゃなか?」



声をかけても反応は無く、傍まで近寄り彼女の前にしゃがみ込むと息をしてるのが分かった。

良かった 、お化け説撤回!!



安心して彼女の傍に落ちているカーディガンを拾う。

顔は伏せていて見えないが、黒々した綺麗な髪の毛だ。

勝手に彼女の髪の毛をすくってみるがサラサラと落ちていった。


良かった、触れる、お化けじゃない。

どうやら本当に寝てるらしい、すっと視線を下げれば見てはいけないものが見えて思わず目を背けてしまう。




「パンツ見えとる・・」


気付いてない訳だし、特に俺が悪い訳じゃない。

それにこんなひと気のない時間なんだから見られる心配もしてなかったのだろう。

なんでだろう、罪悪感が湧いてくる。



俺、悪くない。




「・・・寒いんならココに居らんで教室か保健室にでも居ればええじゃろ、あーしょうがないのう・・」


俺は手に持っていたカーディガンを、せめてパンツが見えないようにかけてあげようとしたがどうにもうまくいかない。

最終的には結局、肩にかけるという選択肢で終わった。

肩に乗っかっただけのカーディガンを見て、俺はそれなりに満足した。

どうせ誰も来んじゃろ、うんうん、そうに違いない。



さてと、寝直しじゃ。


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どれくらいたっただろうか

ガチャンという派手な音がして、目がさめた。

あーよく寝た、ぐっと伸びをする。

くあっと欠伸をしながら俺はそーっと給水塔の上からさっきまで下にいた女の子の場所を見る。

女の子は居なくなって俺のカーディガンが畳んで置いてあった。


お、じゃあ、さっきの音は彼女が出て行った音か。

携帯の時計で時間を確認するともう昼飯の時間になりそうだ。

そろそろ、俺も行かんとな。

荷物を肩に乗っけてハシゴを降りる。

カーディガンを回収しに行くとその上には飴が乗っていた。



ビー玉みたいな少し大きめの飴。

とりあえず飴はポケットにいれてカーディガンを拾う。




あー、ブンちゃんとこまで行って、飯わけてもらおっと。

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