メールも電話も確かにソワソワしているような感じで気のせいかとも思ったが、やっぱりそうやった。

珍しくりんから会って話したいとメールをもらったのは昨日の事だ。

部活を終えて、携帯を確認すればりんからメールがきていた。

どうやら約2か月ぶりの氷帝が懐かしいらしく、中等部の時の担任と話をしてて校舎内にいるらしい。

俺は部活を終えてシャワーを手早く浴びて、隣にある中等部へ向かった。

職員室がこんな時間でも明るいと目立つもんで、だだっ広い校舎内も迷わずに辿り着く。

ドアを開ければ、つい最近まで担任だった教師とりんがお茶を飲みながら談笑していた。

ドアを開けた音で2人の視線が俺に向く、俺は軽く手をあげながら挨拶をする。


「せんせー久しぶりやん」

「おお、忍足、やっぱり暁と忍足が2人揃うと余計懐かしいな」


しみじみ言う元担任は今年から教科担当になったらしいのでクラスという物自体が懐かしいのだろうか。

まあ、中等部なんすぐ横やし、俺的には何の感動もないんだが。


「侑士お疲れ様ー、先生が暇つぶししてくれてた」

「そか、良かったわ」

「じゃあ忍足と暁のセットも久しぶりに見たし、職員室閉めるぞー」


教師が立ち上がって、つられるようにりんも立ち上がった。


「はーい」

「ほな、先生またなぁ」

「ああ、気をつけて帰れよ」

「じゃあねー」


俺はりんが持とうとした大きめのバッグを先に持ちあげて職員室を出た。

何が入ってんのか知らんけど、いつもより重い。



「あ、重いでしょ、別に持たなくても自分で持てるし、いいよいいよ」

「ええって、これも筋トレやし、でも何が入ってるん?いつもより全然重いわ」

「お泊りセット、今日は侑士の家に泊まるつもりで来たから!」

「そうなん?それならそう言うてくれたら色々用意したったのに!」

「言ってなかったっけ?」

「言うとらんわ!」


じゃあそのまま家に行けば良いだけだし、俺的にも楽だから別に良いけど。

それならタクシー呼んどけば良かったわー、まぁ今からでも遅くない、呼ぼう。


「電話してもええ?」

「いいよー」


一言断って、いつも使うタクシーの運ちゃんに電話をかける。

どうやら近くに居たらしく5分もしないうちに着くらしい。

電話を切ると、横に居たりんが不満そうな声をあげた。


「タクシー?」

「おん」

「なんか勿体無い」

「はよ家に着いて、一緒に飯喰ったらタクシー代なんチャラになんで?時は金なりや」

「お坊ちゃんめ」

「言うてろ言うてろ」



やっぱり変や、いや、別にタクシーの件はいつも通りなんやけど。

いつもなら泊まるって先に言うし、よくよく考えても急に明日会えるか、なんて言わんし。

隣を歩くりんを横目で確認する、やっぱりいつもと、ちゃう。


「なぁ、りん」

「んー」

「恋でもしたんやろ?」

「え!なんで!」

「なんかいつものりんとちゃう、変や」

「・・・」


そうは言ったものの、りんが恋をしたという確信なんか無かったんだけど。

ただ、いつもより浮かれてるような。


「やっぱ侑士には分かっちゃうのかー」

「ほら、や、やっぱりなぁ、そうだと思ったんや」

「えー、私から言って驚かせたかったのになぁ」

「ほら、あれや、俺に隠し事なん無理やな」

「なんか私もそんな気がしてきた」



本当の事を言えば、からかってみようと思っただけだったのだが。

こうなってしまったものはしょうがない、なんでもお見通し感とか出さな。


「りんが恋したなら俺もちゃーんと協力せな、罰が当たるわ」

「なんかどうしていいか本当に分かんなくなっちゃって、だからそう言ってくれると助かるよ」



校門を出ると呼んだタクシーが止まっていたので、なんなく乗り込んだ。


携帯を取り出してネットでピザを注文する、今日は飯を作ってる時間も勿体無い夜になるに違いない。

2人分の定番ピザを注文して、携帯をしまう。


買ったばかりのはずであるスマートフォンをいじっているりんを横目で確認する。

あー、誰に恋したか知らんけど、俺よりブッサイクで性格悪かったら親身に応援しているフリをして、ぶち壊したろ。





---





侑士の家について、私は持ってきたパジャマに着替えた。

ちょっと着替えてくると言って、洗面台のある場所まで向かう。

手早く着替えて、よし、これでいつ寝ても大丈夫。

リビングに戻ると、侑士も部屋着になっていた。



「あ、侑士、ご飯は?何か作ろうか?」

「大丈夫や、タクシーん中でピザ頼んどいたで」

「え?電話なんかしてなかったじゃん」

「ふふふ、インターネットで注文できる世の中やからな、もう来るんちゃう?」



案の定、家のチャイムが鳴り、侑士が取りにいく。


久しぶりに入った侑士の部屋は前に着た時となんら変わりはない。

散らかってる訳ではないし、やっぱり物があんまり無いせいか広い気がする。

侑士の部屋は奇麗で、整ってるんだけど、モデルルームみたいで少し落ち着かない。


飲み物を用意しようと私はキッチンへ向かった。

棚からコップを取り出して、冷蔵庫を開ける、お茶発見。



「りん、コーラあるで、コーラ」

「え、宅配でコーラまで頼めるの?」

「なんかオマケでついてきたんや、俺1人じゃ飲みきれんで、一緒にコーラな」

「じゃ、コップだけで良いのか・・・」

「そや、はよこっちおいで、恋バナなんいくら時間あっても足りんもんや」



まぁ、確かに恋バナをしに来たんだけど、そんなには時間がかからない気がする。

圭子と話した時も結局違う所にまで話が飛んでっちゃったりして時間かかっただけで。

コップを2つ手に取り机の上に置く、侑士は手早くピザの箱を開いて食べ始めた。

こいつ・・・いただきます、してない。


「じゃ、まずどんな奴に恋したんか聞こうやん、変な奴ちゃうやろな」

「んー変な人じゃないとは思うんだけど、ああ、まぁ変わった人みたいだし、やっぱ変な人なのかな・・・」

「なんやそれ、携帯の写真とか無いん?顔見たら性格なんてパっと分かるもんやろ」

「顔?そ、それなら侑士知ってるよ」



まだ私が顔も名前も一致してない時に彼の事を言ったのは侑士だし、知ってるはずだ。

私はコーラの蓋をあけて、2つのコップにそそぐ。

頂きますと小さい声で言って、まだ暖かいピザに手を伸ばした。



「は、もしかして幸村ちゃうやろな!」

「精市!?ちがうちがうちがう!」

「じゃ、誰なん?テニスの奴?」

「テニスの、人、らしい、えっと、真っ白の、におーくん」

「なんや、仁王か・・・ん?自分、この前とか全然興味無かったやん!!」



なんか精市も言ってたけど、この前話した時に興味無かったって重要な事なのだろうか。

でも、今は興味津々になっているんだからしょうがないじゃない。



「あはは、無かったんだけどね。でも面と向かって話ししたら、なんかドキドキしちゃって、立海の友達に言ったら、それは恋だって言うし、私もよく分かんないんだけど、なんかにおーくんの事知りたいし、におーくんの事思い出したりするとドキドキするし、良い匂いような気もするし、これが恋?はぁ・・・」



自分で口に出して確認してみるけど、やっぱりよく分からない事を言ってしまった。

何を言ってるか自分でもうまく理解できないし、思わずため息まで出てしまう。


「恋なのかな・・・これって」

「聞くなや、それ、めっちゃ恋やん・・・でも仁王って!なら俺でもええやん!」

「え!なんでそうなるの?」

「俺と仁王ってキャラ被ってるやん!どっちでもええやん!」

「ええ!?全然被ってないと思うし、似てないよ」

「いいや!似てんねん!よう言われるん!」

「ええ!?」

「いや、今のは嘘やけど」


なんでソコで急に、におーくんに張り合うのかは分からない。

でも珍しく眉間にシワを寄せていたので、声には出さないでおいた。

におーくんが近くに来たらドキドキした事を話すと、侑士の眉間のシワは更に深くなった。

すごく難しい顔をしながら黙った彼を見ながら、ピザを頬張る。

相談しに来たのは私のはずだけど、まるで彼が相談者のようだ。

そしてようやく沈黙を破り、彼が言ったのは「俺、りんと今みたいに会えなくなるなんて嫌や・・・」だった。

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