俺はいつも通り放課後の部活に参加していた。

柳生に手伝ってもらいながらストレッチをする。

他の皆もそれぞれのペアに手伝ってもらいながらストレッチをしていた。


柳に背中を押してもらっている真田とか、きっと俺より柔らかい。

固そうに見えるけど、それは性格だけの話でストレッチは関係ないのか。



「いた、いたたた、やぎゅー押し過ぎじゃよ」

「いいえ、これくらい出来なくてどうしますか」

「うげ」


足を大きく開き、背中を押してもらう。

いや、背中にもう、絶対座ってるじゃろ、この重さ。

ひどい。


一通りのストレッチを終えて、軽くのびをしていると急に寒気がした。


足から頭までビリリと震える、なんじゃなんじゃ、どうした俺。

訳も分からず浮き出た腕の鳥肌をさする。

風邪かの、いや、でもくしゃみとかしとらんし。

変じゃのう、あ、今度はゾクっとした、ほんとなんなんじゃ。





「やぁ、柳生。ちょっと仁王を借りても良いかい?」

「ああ幸村くん、ストレッチですか?どうぞどうぞ使ってやって下さい」

「・・・ぷ、ぷり」

「悪いね、そんなにかからないと思うから」

「じゃあ私は先に基礎練をしていますから、また後で、アデュー」



あ、原因わかった、風邪じゃない、決定。

俺は鳥肌をさすりながら声がした方を振り向く、そこにはいつも以上にニコニコした幸村が立っていた。


まてまて、幸村のストレッチを手伝うのっていつもは真田か参謀の役目じゃろ。

なんで俺。


まぁ皆の前で名指しされた訳だし、柳生もとっとと違う所に行ってしまったし。

俺に拒否権なんか無いんじゃけど。


しょうがなく幸村のストレッチを手伝いはじめる。


「ねぇ、今日の昼休みはどこに居たんだい?」

「きょーしつ」


別に嘘はついていない、大半は教室で漫画を読んでた訳だし、間違いない。


「じゃぁ4時間目は?」

「お、おくじょう、に」


俺は背中を向けて座っている幸村から目をそらしつつ言う、聞きたい事があるならハッキリ言えば良いのに。

こういう時の幸村は普段以上に厄介だ。


「なんだと、お前!それはサボっていたという事か!たるんどる!!!」


地獄耳の誰かさんが急に俺の後ろに立ちはだかって影を作る。

うるさいうるさい、でかい声じゃ。


「真田、確かに真田の言う通りだと思うよ、だけど今の状況分かる?俺はお前にストレッチを手伝ってくれって言ったかい?今、仁王と話をしているんだ。空気が本当に読めないね、そもそも人が話をしてる時に、そんな大声を出して割り込んで来るってどうなの?」

「う、いや、だが」

「黙れって言ってるんだよ、遠回しに、空気読めよ」

「う、うむ・・・」

「本当に分かってる?」

「当たり前だ!」

「じゃあ、あっちで基礎練してこいよ」



背後の怒気は消え失せ、ついでに影も消えた。

後ろを振り返れば、なんだかシュンとした肩の真田が参謀になぐさめれとった。


サボりの件で怒られなかったのは本当に良かったが、果たしてこの状況はどうだろう。

周りの皆は基礎練をしにコートに入ってしまったし、幸村と2人きりというのは今まであ
まり無い。


幸村は幸村で、次はコッチ側押してとか言ってるし、単に俺にストレッチ手伝わせたかっただけか?

いや、そんな訳あるか。


まぁ、なんとなく。

予想はついているのだけど。


「今日な・・・幸村と噂になっちょる子と鉢合わせたんじゃよ」

「ああ、そういえばりんもそんな事言ってた気がするなぁ」

「実は俺、その子と住んでるマンション一緒みたいなんじゃ」

「ああ、そういえばりんもそんな事言ってた気がするなぁ」



なんじゃ、知っとるんか。

俺から何をわざわざ聞きたいのか、分からん。



「ねぇ、仁王」

「なんじゃ」

「りんの事、どう思う?」

「は?」

「りんがお前がどんな人か教えてって聞かれてさー、今まで何度か仁王の話はしてたんだけど、なんで急に今日、聞いて来るかなぁーって」

「さ、さぁ」

「お前が何かしたんだろ、と、俺は勝手に思ってるんだけど」



俺、が何かした?

なんじゃろ、あんまり何かした記憶は特に無いのだが。



「別に、これといって何もしとらんよ?ただ、俺と同じマンションに住んでるのは人に言わない方が良いって言ったくらいじゃなか?」

「それだけかい?」

「それだけ、幸村とただでさえ噂になってるんだから追い風立てない方がええよって」

「まぁ、たしかに・・・」

「なーんも、しとらん」

「・・・そっか」



そう言った後に、そういえば髪の毛触ったり、返事しないと近寄っちゃうぞ的な事をした事を思い出したが、心の中にしまっておいた。

野生の勘というか、これを言ったら逆になんでそんな事したのかとか追求されそうだ。

別に、理由なんか特に無いんだけど、あんまりにも怯えてるように見えたからつい面白くてからかってしまっただけだ。



「純情な子なのかの・・・幸村のせいでそう見えんが」

「それ、どういう意味だか詳しく説明してくれても良いけど。意外にりんが純情っていう可能性は忘れてたな・・・」

「幸村の言い方だと、りんちゃんは俺に恋でもしたみたいじゃ」

「俺はそうだと思ったんだけどな、仁王もそうだったら面白いだろうなぁーって」

「俺?俺はそういうのパスじゃ、女の子怖い」

「だよな、でもりんには自分から声かけたんだろ?」

「まぁ、そうじゃけど・・・」



確かに、俺から呼び止めたのは確かじゃ。

女の子は怖いし面倒だから、自分からなんて滅多に声かけんし。


なんでじゃ?

お化けだと思ってた子が人間で、飴くれたからか?



「飴が、気に入ったからか?」

「いや、それは俺に聞かれても、・・・はぁ」


幸村になんだか深いため息をつかれて、なんとも言えない気持ちになるが。

まぁ、そこは置いておこう。


俺は幸村のストレッチを一通り手伝って、柳生達の元へ合流し、その頃には真田も元気にテニスボールを追っていた。


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