結局スタバで2時間も圭子と話し込んでしまった。

家について、なんとなく呆然としながらお風呂に入る。

はぁ、ご飯つくるの面倒だな、今日はレトルトのカレーにしよう。

お風呂からあがり、髪の毛も乾かさないまま、私は棚の中からレトルトカレーの箱を取り出した。


たまにご飯を作りたくなくなる時があるんだけど、こういう時のためにある非常食。

別に落ち込んでる訳でもなく、疲れた訳じゃないけど。

なんだか作ってもうまくいかない気がするんだもん。

・・・これは、明日の朝ご飯も明日のお昼ご飯もコンビニにお世話になった方が良さそうだな。

幸い、お小遣いや生活費は持て余すぐらいはある訳だし。


カレーをあたためて、冷凍しておいたご飯もレンジでチン。

あっという間にできたカレーを食べ終わり、それでも私はなんだかソワソワしていた。

普段自分からかけない電話をかけてしまったり。

なんだか私は少し変だ。



「あ、お母さん?私だけど、今大丈夫?」

「大丈夫よ。りんから電話なんて珍しいわね、何かあったの?」



2時間も話し込んだおかげでようやく、私はにおーくんに恋をしたんだという自覚が持てた。

そうか、これが恋か

考えているといてもたってもいれなくなって、ついお母さんに電話をしてしまったんだけど。

何があったの、と聞かれても、いざ声を聞いてしまうと、恋をしてどうしようもなくて電話しただなんて言えないもので。



「なんとなく、電話したくなってかけただけ」

「そう、侑士くんとは仲良くやってる?」

「うん、たまに来て一緒にご飯食べてく」

「そっかー、お母さんも侑士くんとりんと一緒にご飯食べたいなぁ・・・」



なんだろう、なんか侑士の方が気にかけているように聞こえる。

まぁ、母さんのアイドルだからしょうがないか。

やっぱり、恋をしてどうしていいかなんて切り出せそうにないな。

ソファーに転がりながら自分の髪の毛を指でクルクルと回してみる。

どうせなら、電話じゃなくて直接話したいのに・・・。



「ねぇ、長いお休みとかはないの?」

「うーん、ここの所ずーっと休みとれなくて・・・でも来週、なんとか帰ろうと思ってます」

「本当?何曜日?」

「多分、木曜日・・・だったかな、木曜日の昼にはそっちについて、次の日の昼までだったら」

「う、弾丸スケジュールだね」



それじゃあ、よるご飯一緒に居れるぐらいしかできない・・・。

いや、久しぶりに会えるだけでも嬉しいんだけど。



「こればっかりはしょうがないわ・・・あと半年もしたらそっちにずっと居れるから、それまでは頑張らなきゃ」

「うん、分かってるよ」

「ごめんね、大変な思いさせちゃって」

「いいよ、じゃあ侑士にも言っておくね、本当に木曜日?」

「うん、木曜日」



私はソファから立ち上がって、カレンダーがかかっている壁に向かう。

側にあったボールペンで来週の木曜日に丸をつけた。



「はいよー、じゃあまた来週ね」

「え!りん、何か用事があってかけてきたんでしょ!?」

「ううん、急いでる話でもないし、来週会って話すね」

「そう?じゃあ、ちゃんと戸締まりして寝るのよ?」

「はーい、またね」


電話を切りながら、軽くため息をつく。

あーあ、何のためにかけたんだ、でも来週母さんが帰ってくるのは素直に嬉しい。


ご飯は何を作ろう、楽しみだなぁ、母さんの好きなハンバーグにしようか。

ああ、でも外食も良いなぁ。

・・・せっかく母さんが帰ってくるんだから、一日ぐらい休んでも問題ないんじゃないだろうか。

そうだ、そうしよう。

計画的に休もう、担任に予め言っておけば休めるだろうし。

先生はもちろん、私の家庭事情も知ってるから協力できたらするって言ってたし。

先に言えば、変な心配もされないだろうし。



あ、侑士にも言わなきゃ。

部活はさすがに終わったかな、電話をかけようか、メールにしようか。

そうだ、侑士に相談すれば良いのか!

恋愛の話だったら私なんかより断然頼りになるはずだ。

暇な時に恋愛小説とかも読んでるの見たこともあるし、モテるって自分でも言ってるし。

におーくんの事も知ってるし、うってつけじゃないか。


そういえば、侑士がにおーくんについて何か言ってたな、あの時は興味無かったから何言ってるか全然聞いてなかったけど。

あー、ちゃんと覚えておけば良かったな、今更だけど。


今日はもう遅いし、明日話せないかな。

そうと決まればメールにしよう、メール。



明日会って話したい事があるんだけど大丈夫?氷帝の方まで行くから部活のあと会わない?

そうメールを打ったら、案外返事は早く返ってきて会う約束をとりつける事ができた。


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