はぁ、ため息をつきながら昼休みの事を考えていれば、あっという間に時間はすぎた。

北原くんが授業終了後に精市に呼ばれてたので事のあらましは話したのだろうが、本当にこの手紙がラブレターだった場合には色んな気持ちは取り越し苦労になってしまう。

なんとなく、悩ましい。やっぱりため息が出る。


そのままお昼の時間になり、私の前の席を陣取るいつもの彼の顔を見上げると普段のニコニコよりも困ったような、なんとも言えない表情がプラスされていた。



「りん、聞いたよ、手紙もらったんだって?」

「うん、ラブレターかなー、って」

「北原は、単なる不幸な呼び出しかもって言ってたよ」



北原くんの良い所は、素直な所で、悪い所は少し馬鹿な所だと思う。

当の本人に言ってどうする。



「その可能性も、もちろんあると思うから、気合い入れて屋上に行かなきゃなーって」

「行くの?」

「行くよ、一応」

「俺は?」

「置いてくけど、もちろん」



もし、恋のお呼出しで、精市なんか来たら余計ややこしい。

それに、不幸のお呼出しでも、精市が来たら本当にややこしい。

クラスメイト達は知らないだろうけど、私は別に何回もこういう事を通り過ぎてきてるので慣れっこだ。



「えー、俺、ご飯食べる人居なくなっちゃうよ」

「北原くん達と食べたら良いじゃん」

「やだよ、りんと食べたいから食べてるのに、俺の楽しみ奪う気?」



な、なんでこんなに高圧的な事を言いながら笑顔なんだろう。

遠目に見てれば、ニコニコ笑ってるだけで良いけど。

近場に居る私には、多少なりとも恐怖を感じるんですが。



「うん、じゃあ早く行って来るね、帰ってきたら一緒に食べよう」

「分かった、いってらっしゃい。もし、なにかあったら携帯でワン切りしてね。ほら、携帯で俺の電話番号表示して、ボタン押したらすぐかかる状態にして、良い?もし電話かかってきたら、すぐ俺が屋上に行ってやるから」

「うん、分かった、大丈夫、氷帝で何回もあったから慣れてるもん」

「え、そんなに告白されてきてるの?さすが氷帝のお嬢様は桁が違うね」

「ちーがーうー!」

「あはは、冗談だよ、早く帰っておいで」



手紙を一応手に持って、屋上へと向かう。

まだ昼休みが始まったばかりだけど、果たして本当に居るのだろうか?


別に居なかったら居なかったで、良いんだけどね。

呼ばれて、行った事に意味があるんだし。

こういう紛らわしい手紙にしないでくれたら、もっと方法はあったのになぁ。


廊下をずんずんと早めに歩いていく、廊下は比較的にすいていて、屋上まではすぐに着きそうだ。


屋上へ続く階段の途中で、髪の毛の白い人とすれ違った。


私は一方的に彼を知っているので、なんとなくこの狭い空間ですれ違うのは気まずかったけど。


重たい屋上のドアがこの前見た時よりも大きく感じる。

薄暗い階段に、ほんの少しだけドアの隙間から光がもれていて、さぁ早く開けろと言わんばかりじゃないか。

私は手に持ったままの手紙を握りしめて、深呼吸をした。



どうか、単なるラブレターでありますように!



意を決してドアノブに手をかけた時、「ちょっと待ちんしゃい」と声が聞こえて私は振り返った。

振り返った先には、すれ違ったばかりの白い髪の毛の人、えっと確か、名前は、におーくん。



長い前髪を揺らしながら私を見上げた彼の目は何だか色素が薄くて、同じ日本人とは思えなかった。

ついでに、彼も、きっとものすごくモテるんだろうという顔をしている事に初めて気付く。

薄暗い中で、彼の髪の毛も、彼の目も、なんだか蛍光色みたいな光を発しているような気がする。

この前、エレベーターで会った時にはほとんど後ろ姿しか見えなかった。

こんなに綺麗だったのか。におーくんて。

呆然と彼を見ていたら彼がまた口を開いた。

きっと私に声をかけているんだ。


「お前さん、屋上に何か用事でもあるんか?」

「・・・用事っていうか、まぁ、呼び出されて」

「誰に?」

「さぁ、そこまで書いて無かったから」

「ふーん」


彼は降りていったはずの階段を1つずつ上って、楽しそうな顔をしながら私に近づいて来る。


「俺、さっきまで屋上に居たんじゃけど、人が来たから出て来たんじゃ」


私はドアノブに手をかけたまま、一段一段、近づいて来る彼の目から、視線を外せなくなっていた。


「なぁ、誰が来たか、知りたい?」


気付いた時には背の高い彼が、私の顔を覗き込みながら言った。

近い近い、近いちかいちかい!!!


「飴くれたら、教えてやるぜよ」

「あ、飴?」

「あーめ」


顔が近いまま、全然離れてくれない。

これは、一体どういう状況なんだろ、鼻から汗がとまらない。

ドアノブを離してポッケの中に手を突っ込めば、いつもの飴が入っていた。

それを取り出して、飴を手のひらに乗っけると、「これじゃこれじゃ」と言って彼は飴をヒョイと持ち上げる。

なんで私が飴もってるの知ってるんだろうか、もしかして飴の妖精か何かか。


「屋上でお前さんを待ってるんは、」


彼は至近距離のままニィっと笑った。


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