また夢を見た。
今度は侑士が立海の制服をきて現れた。
私はそれを見てスゴイ安心してて、これでクラスの皆と仲良くできなくても大丈夫だとか思ってる夢。
最近、毎回夢に侑士が出てきてる、なんだかんだで、困ったら助けてくれるのは侑士だって脳みそが分かってるのかもしれない。
「りん、器用やなー、こんなちっちゃいソファーでも寝れるんやな」
ペチンという音に驚いて私はビクリと身体が揺れた。
あれ、なんだ、まだ寝てたのか?起きてるつもりになってたよ。
目を開ければ、見慣れた関西弁の男がコッチを見て笑っていた。
「起きた?あがってんでー」
「侑士・・・さっきぶり?」
「先週ぶりや」
「あーそっか、夢にやたら出てくるからさー」
「そうなん?俺の夢にも出てきてええよ」
侑士はそう言って、自分専用のソファーに腰をおろした。
我が家には1人がけのソファーが3つある。
母さんのと私のと、そして侑士のと3つ。
中等部の時から一人暮らしの侑士は、我が家によく入り浸っていた。
母さんが仕事の時は侑士とご飯を我が家で食べる事がしょっちゅうだったし、母さんがいる時に侑士の座るとこが無いのも寂しいって言って母さんが買ってきたのだ。
まぁ母さんが侑士の事を気に入ってたのが1番の理由なんだけど。
「りん、元気ないん?なんでメール返ってこうへんの?」
「うぐ」
「しゃーないから家まで来たったわ」
「とか言いながら1人でご飯食べんのが寂しかったんでしょ」
「うぐ」
「一緒に食べてあげるから侑士つくって」
お互いのここ一週間の痛い所をつつきあう、この後5分ぐらいどうでもない事をつつき合って、どちらともなく堪えなくなって、2人で笑いあった。
やっぱり、侑士とは波長があってる気がする。
「材料なんかあるん?俺つくったるわー」
「野菜はあるよー、あと鶏肉」
「カレーのルーは?」
「あるよ」
「ほな、カレーにしよか」
「うん」
「つくってるわー、自分いつまで制服なん着替えておいでや」
あ、そういえばまだ制服だった、お風呂もはいってないや。
でも侑士だって制服のままなくせに、着替えないのかな?
まぁ、いっか。
「侑士ー、私お風呂ー」
「カレーできる前までに上がってなー、テレビつけてくれん?」
「はーい」
うーん、うちの母さんより、侑士の方がお母さんっぽいなぁ。
侑士のお嫁さんはきっと楽できて良いだろう。
テレビをつけると、クイズ番組がやっていた。もう8時か、ん?8時?そんなに寝てたのか私。
侑士泊まってくんかな?まぁ後で聞けばいっか。
---
お風呂からあがって、着替えを済ましてリビングに行くとカレーの良い匂いがたちこめていた。
美味しそうな匂いを感じつつ、カレーが盛られたお皿やスープのお椀を食事台の上に運ぶ。最近は1人分だけだったから、2人分になるとなんだか机の上がやたら豪華だ。
「美味しそうー」
「うまいでー、味見もちゃんとしたし、やっぱカレーには牛乳やな」
「・・・牛乳はいってなくても味かわんないよ」
「こればっかりは譲れん」
侑士のこだわりは毎回よく分からないけど、美味しそうだから分かったフリをしておこう。
侑士のお嫁さんはやっぱり面倒くさそうだ。
まぁ私がなる訳じゃないから良いか。
ひと口食べてみたが、牛乳の良さはやっぱり私には伝わらない。
でも美味しい、人が作ったご飯ってなんでこんなにも美味しいのだろうか。
「あ、そういやな、さっき仁王見たんやけど、同じマンション住んでるんやな」
「におーって誰?人の名前?」
「同じ高等部やろ?知らん?目立つ髪の毛しとるから知っとる思うたわ」
「なんで侑士が立海の人知ってるのさ」
心の中で、私なんて今日はじめて立海の人の名前知ったのにと付け足す。
この話はまだしてないから、後でしよう。
「俺、テニス部やん。立海のテニス部強いからよく大会で会うとんのや、で仁王っちゅう奴がおるんやけど、そいつとマンションの前で会うてなー」
「このマンション?」
「そや、髪の毛真っ白の奴」
「え、岳人くんよりヒドそうだね」
「そやなー、インパクト大やでホンマ」
「そんな人居るんだね、しかも同じマンションに」
岳人くんと初めて会った時の、あの何とも言い難い気持ち。
クラスの中に髪が白い人は居なかった、気がする。
明日、もしも余裕があったなら他のクラスと一緒の授業で探してみよう。
「しかもなかなかのイケメンやからな、俺の次ぐらいに」
「その自信はどっからくんの・・・」
「俺、めーーーっちゃモテるんやけど」
「跡部くんの方がモテてたと思う」
「・・・跡部と比べられたら、なんも言えんわ」
他愛ない話は進んでいく、私はようやく友達が出来そうな事や、屋上であった不思議なカーディガンの事を侑士にひとつずつ話していった。
飴のくだりになると、侑士は自分の荷物の中から、ビー玉のような飴が沢山はいった袋をくれた。
寂しくならんようにおまじないもかけといたで
余計な一言のせいで、また泣くかと思った。
←→
top