妄想ネタ


2014/06/26 01:37

「先輩っ……!」
俺を抱くその身体が全身で俺への感情を伝えている。限界が近い筈なのに何故か俺の思考は冷静で、恍惚の表情を浮かべて律動を繰り返す一つ下の後輩をただただ見つめていた。
赤也が俺に胸の内を明かさない理由はなんとなく分かっている。言えば俺が困るって、あいつなりに理解しているんだと思う。赤也は馬鹿で単純だけどああ見えて真面目だし、人の好意や気持ちには敏感な方だ。きっと何処かで俺が抱く不毛な恋心にも気付いているんじゃねぇかな。それが赤也に対してのものじゃないってことも。
我ながらどうかしてると思う。一度肌を合わせたくらいで仁王のことが忘れられないなんて。行為中の汗の匂いだとかしっとりとした背中だとか、そういうの全部が今でも鮮明に記憶されている。どういう気持ちで仁王が俺を抱いたのかは知らない。仁王にそういう趣味があったのかも知らないし、最悪魔が差したとか気まぐれだとかそんな理由かもしれない。あれ以来必要以上に触れてこない理由も俺には知る術もなかった。
ただ俺は間違いなく仁王を想って今日も赤也に抱かれていた。赤也の気持ちを利用して、それでも何も言わない赤也の優しさにつけこんで。夢中で腰を送る赤也を受け止めながら俺はまた仁王のことばかり考えていて、そんな自分がたまらなく情けなくて大嫌いだ。やがて赤也が自身を引き抜いて熱を吐き出した。中で出せば良いのに、律儀な奴だと思う。
「ごめんな、赤也」
黒い髪をそっと撫でる。俺は狡い。謝ることでただ自分が楽になりたいだけだ。赤也は今日も俺を責めることなく、ただ静かに後処理をして部室を出て行った。あの日の仁王も何も言わなかった。行為が終わるとただ苦しそうに眉を寄せて俺の名前を呼んだだけだ。そして俺たちは遠くなってしまった。もしかしたら俺は大事なものを二つも無くそうとしているのかもしれない。怠い身体を引きずって仁王と記されたロッカーのネームプレートを指でなぞる。目尻に浮かんだ水滴には気付かない振りをして。








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