夕方って帰宅ラッシュですよね

[恋愛お題ったー] http://shindanmaker.com/28927

「夕方のベッド」で登場人物が「思い出す」、「誕生日」という単語を使ったお話を考えて下さい。



朱い景色が目に刺さる。夕焼け色というものは夜が訪れることを意味し、人間が眠気を誘われる時間帯でもあり一番ぐっすり寝つける色を表しているととある研究結果でも言われていた。
私はジュードのベッドの上で寝っ転がる。彼は居ない、私一人。ベッドから見える夕焼けを贅沢に堪能して目を閉じた。
鼻孔をくすぐる私とは違うにおい、思い出すのはあの日。私がこの世界で目を覚ました日。
あの時は事実を受け入れたくなくてリビングに向かうまで私の部屋だと言い聞かせていた。本当に懐かしい、私たちの同居生活はこの日から始まったのだ。
目を開いてGHSで日時を確認した、あの時と変わらない行動。そこで大変な事実を思いだしたのだ。

「……誕生日、…!」

映る画面の日にちは自分の誕生日、すなわちジュードの誕生日。
女子力が私に備わっていないのは誰もが認めるレベルだがまさかこういうところで現れてしまうなんて。赤々とした夕陽が地平線へ潜り込もうと揺れている。窓から視線を外して転げ落ちるようにしてベッドから降りた。
GHSを片手に私は部屋を出る。

リビングで簡素だがお出かけをする準備をすませて外へでた。
目指すはトリグラフ一択。
前にミュゼと食べ歩きしていたときに見つけたケーキ屋さん。とてもなめらかなクリームはきっと彼の舌をも唸らせることだろう。
敵になりふり構っている暇もない、ホーリーボトルを撒いて全速力で駆け抜けた。


「あ、」

彼の声と被さるように私の声。そのケーキ屋さんへ向かえばジュードがそこにいた。目の前の可愛い店員さんが「こちらでよろしいですか?」といくつかのケーキの入った箱をジュードに見せていて。返答した彼は私に背中を向ける。ジュードと丸被りな私は呆然と立ち尽くすだけ。

「ファルス、…帰ろ?」

手をさしのべられ私は悩む。彼の誕生日プレゼント、何も買ってない。街灯がぱちぱちと灯り赤暗い夜がやってきた。彼の手を取り、歩いて必死に何かないか目を光らせる。そもそもジュードのほしいものがよく分からない。

「……そうだ、あそこ寄っていい?」

彼の指さす先は装飾品屋。老若男女、オールラウンドな品揃えに私もジュードも目を奪われた。ここでジュードに何かを買おう。そう決めたら即行動。彼にだったら何が良いかな。ネクタイ?ベルト?………駄目だ、実用性重視すぎて女らしさが皆無で終わる。
でもプレゼントなんだからやっぱり長く身につけていてほしいわけで。

(腕時計……、)

確かに腕時計はいい。ジュードは持っていないからいつもGHSで確認している。でも私たち拳で戦う身としては腕時計なんてしていても壊れる可能性も出てくるだろうし。

目のついた腕時計をみた。13,000ガルド……ま、相場かな。こんなの渡してジュードは付けてくれるだろうか。やっぱりネクタイやベルトのほうがよさそう。

ちらりとジュードをみる。もうお会計の方へと向かっている彼。これは大変。私は考えを捨てその腕時計をもってジュードの後ろへと並んだ。

背中側からのぞき込もうとするが「だめだよ」と苦笑を返された。


あれから家に着いた頃には満天の星空も良いところである。
二人はジュースで乾杯、ケーキをとてもおいしく平らげて同じ言葉を交わすのでした。



「お誕生日おめでとう」



happy birthday!!



私はジュードのベッドの上で寝っ転がる。彼は居ない、私一人。ベッドから見える夕焼けを贅沢に堪能して目を閉じた。
仰向けにしていた身体を横に向ける。首もとに付けていたチェーンの先から小さい輪っかが流れ落ちた。光る小さな宝石が赤々とした夕陽に反射して。部屋の中にも夕暮れを誘い込んだ。
リングをいじりながらも耳を澄ませて私は待つ。


「ただいま」



同じモノを填めた貴方の帰りを。




2013.10/30


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