訪問today

[jude side]

ルドガーとエルが研究所にやってきた。その手には買い物袋がぶら下げられていて、まるで主夫と娘、そういいたくなる光景に僕は目が点になった。
それは彼女が目覚めて一日後の話。


「どうしたの二人して」

バランさんにお客さんだと促されてすっかり仕事モードになっていた僕は気が抜ける、先程の凡ミスのせいもあってか少々気が張っていたようだ。ほっと息をついてエルがたたたっと駆け寄ってきたのでしゃがんで同じ背丈の体制をとる。

「ジュードにさしいれー」

渡された袋の中にはパンやジュース。お昼にでも頂こう。お礼を言ってエルの頭を撫でればぎゅっと抱きついてきた。そしていい匂いと柔軟剤の香りを楽しんでいる。

「もう…、前もって言ってくれたらもっと時間をあけたのに」

それにその袋、トリグラフのお店の名前だ。自宅だってトリグラフにあるのにわざわざ重い思いをしてまで持ってくることはないだろう。ルドガーが僕の視線を追うように自分の袋をみた。そして安定の苦笑い。

「ファルスから、頼まれたんだ」

「………ファルスさんが?」

ルドガー、それいっていいの!?エルが慌てている。前のハリセンボンの件もあってかエルは秘密を漏らさないよう頑張っていたみたいであっさりと暴露するルドガーに信じらんない!と怒っていた。
それよりもファルスさんだ。昨日の今日で朝食まで作ってもらったのに……というより同じ家に住んでいる僕よりもルドガーを頼るなんて。いや、彼女の世界でも散々嫌われていたからな…、悔しいけど仕方ない。

「ジュードに世話になりっぱなしでいるのが嫌だったんじゃないか?」

「それあるかもー。ミラだっていっつもルドガーとはりあってご飯作ってくれるもん!だからさいきんたべすぎちゃうんだよねー」

ミラさんの話はたぶん違う理由があるんじゃないかな。と思う…でも、そうか。世話になりっぱなしでいるのが嫌って言うのは納得できる。僕だってついつい手伝うことはないかと探してしまうことがあるし。

「別にファルスさんが気を使わなくていいのに……、」

まだ肩や背中の怪我だって完治していないのに。あまり無理をさせたら治るものも治らない。全く…困った患者さんである。
そんなときエルは不思議そうに首を傾げた。

「どうしてジュードはファルスのことファルスさんって呼ぶの?いっしょの家に住んでるんだよね?」

「………え、?」

「いっしょの家に住んでるってことは家族もドーゼンなんだよ!エルはルドガーとミラと家族だし!」

あ、でもルドガーはアイボーでもあるんだけど。と続けるエルに何も言わないルドガーが頭を下げた。エルの帽子の上に手を添えた彼はそのままエルの頭もさげる。どーして!?とエルが疑問をぶつけていた。

でも家族、か。
ファルスさんはあまり喜ばなそうな言葉だけど。……うーん、

「そうだね、一緒の家に住んでるわりには他人行儀がすぎるかもしれない。今度からファルスって呼んでみるよ」

「そのほうがいいよ!いっぱいいっぱい話しかけてファルスにこの世界もステキだって教えてあげよーね!」

エルも考えるところがあったらしい。彼女が自分の世界とこの世界のことを引きずってしまっていると思っていたのだろう。勿論、その通りなんだろうし子供の考えることは計り知れないなと素直に感心してしまった。


「じゃあそろそろ…」

「エルたちはファルスに会ってくるねー!」

ジュードはお仕事頑張って!そう言った。
手を振って見送る僕は彼女のことを想いながら研究室へと戻る。これからのことを考えながら。棘がなくなる関係になれるように、ファルスが本来の仲間に向ける笑顔をすこしでもむけてくれるようにと願いながら。
血の繋がりだけが家族じゃないってエルに教えられたことをそのまま伝わればいいな。


「ファルス……か、」



小さな家族愛
(彼女の名前を噛みしめる)

2013.9/23


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