抱き枕の気分でした。

あなたはジュード×ファルスで【胸に抱かれて / もちろん、その先には】をお題にして140字SSを書いてください。
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「ただいま…、」

おぼつかない足でふらふらと家の中へ入ってきた彼はリビングへ着くなり糸が切れたように倒れた。また無理やり飲まされでもしたのだと思う。数々のスポンサーの方々から資金を得て研究しているこの人たちは勿論下手に出るしかなく、飲めと言われれば飲むしかないのだ。自分ももとの世界で一言断ったことがあるのだけどその人は終始機嫌を損ねてしまったらしくて断ることはいけないことだと学んだことを思い出した。ジュードも相手にあわせたのだろう。
上体を力一杯込めて彼を起こし、引きずりながらも寝室へと向かう。リビングの冷たい床に寝かせて風邪なんて引いたら怒られるだけじゃすまないものね。

(………にしても、重い、)

やっぱり男の子だ。気を失っているようにもみえる彼を少し引きずるのにも多大なる労力を使っている気分。もう少し運動したほうがいいのかもしれない。

「ジュード、寝るならベッドで寝て」

彼をベッドの前まで運んで肩を叩いて起こした。
うっすらと開けられたまぶたの向こうは少し潤んでいてお酒の余韻で染められた頬とその目は何だか変なものを見ている気分。こっちまで伝染しちゃいそう。
彼はもぞもぞと赤ちゃんのようにベッドへあがる。
毛布をかけて、あとは何をしてあげられるだろうと考えた時服の裾をくいっと引っ張られた。

「ファルス…、傍にいて、」

離れないで。とまるで駄々をこねているようで。あまり見ることのできないその声に気をよくした私はベッドにもたれるようにその場で座り込んだ。でも、それではどうやら彼はお気に召さないよう。か細い声で一緒に寝ようと呟くのを聞き逃すことができなかった。
勿論戸惑う。だって今の彼は酔っぱらい。明日の朝にでもなって困惑されるのが落ちなんだから。シングルベッドに二人っていうのも…ないとは思うけど酔いにかまけて蹴り飛ばされてベッドから落ちるかもしれないし。おねがい、と唇を震わせて呟くジュードに出してあげられる答えはひとつだった。

「お、おじゃましまー…す」

正直気は進まないが明日のことは明日になってから考えよう。枕の代わりに自分の片腕を犠牲にして甘えん坊さんの顔色を窺った。とろんとした目と目があう。口元が緩んでいてまるで嬉しそう……、
そこまで考えて、考えるのをやめた。

目を閉じて平静を装う。いつになったら寝付けるのだろう。と自分に笑った。
ぐんっと腰に手を回されるまでは。
意味が分からなかった。理解する暇も与えてはくれなかった。
腰に手を回されて彼のほうへと引かれて、今は彼の腕の中。強いて言うなら胸板に顔を押し付けられている。胸に抱かれる。そんな表現がお似合いだ。

静かにしているだけだと大きな心音が聞こえてしまう気がして。少しでも距離を開けようとみじろぐが逆効果。もっと強く抱き締められた。


「あばれ…ちゃ、だめだよ」


密着型感染
(暑い)(熱い)(緊張して深くは眠れなかったけれど朝は耳元で雄叫びを聞いたせいでばっちり目を覚ますことができました)

2014.7/22



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