一枚上手。

[heroine side]

「ごーがい!号外ですよー!」

遠くから聞き覚えのある声が耳に入ってきた。新聞をいくつも持ってきているレイアはいろんな人に手持ちの新聞を買わせている。ってなんで営業しているんだろう。記事の取材とかしていなくていいんだろうか。
ふと、レイアと目が合い彼女は私めがけて走ってくる。うーん…よし。上着から財布を取り出して待つことにしよう。

「ファルス、おねがい!新聞買って!」

言われた金額を彼女に渡して代わりに新聞を受け取った。一面に大きくルドガーが載っている。えーと何々…テイルズオブ人気投票栄えある一位はルドガー・ウィル・クルスニク二位ルーク・フォン・ファブレ三位…ジュード・マティス……どうやら今年の人気投票の結果らしい。ルドガーは去年の人気投票に参加していなかったしルークはユーリとリオンは殿堂入りをしたから繰り上がりしたのだろうけど。

「ジュード結構順位上がったんだね」

そして三位の壁、アスベルはジュードに敗れ四位へ降格。四位でも普通に凄いことだと思うんだけれど、本人にとってはきっと「マモレナカッタ…」と名台詞を用いた結果だったのだと思う。

「あ、人気投票の内容だったんだ」

「……え、レイア内容知らなかったの?」

レイアは新聞を売ることだけに専念していたようで中身を読むことなく売りさばいていたようだ。見た限りでは、押し売りである。
リオンのかわりにジューダスランクイン。あ、いや、かわりって言い方はおかしいな。ジューダスはジューダス、リオンはリオン。ネタバレ禁止禁止。

まだ残っている新聞を売ってくるねと言うレイアと別れ、私は広間のベンチに座って一人読むことにした。

(せっかく一位と三位が知り合いなんだし…何かしてあげたいよなー)

そうだ、料理を振る舞おう。定番だけど一番みんなで集まれる理由だし。でもどこでやろう…言い方は悪くなっちゃうけどジュードの家じゃ皆は入りきってもぎちぎちだろうから。広さを求めるならドロッセルのところに頼もうかな。エリーゼを経由して彼女に訊けばいいかもしれない。
GHSで連絡をとる。が、ドロッセルは丁度自分の仕事に追われているらしくて時間を作るのは難しいと言うことだった。

「そっかあ…それなら仕方ないね」

『今度改めてお祝いしましょう、って言ってました』

少し談笑して通話をきる。ひとりです。皆で騒げるものと勝手に思いこんでいた分ちょっと悲しい。また、今度か。今度っていつになるんだろう。
私は別に成し遂げなきゃいけない使命もないし。ああ、源霊匣は完成させたいけれど。でも自分の世界にいたときのように気張っているわけではない。
こんなこと、前にも考えたことがあった気がする。成長してないなあ、自分。

「…ん、あれ…ファルスなにやってるの?」

新聞と景色の隙間にはばかるズボンに見覚えがあった。その声にも聞き覚えがあった。顔をあげて、毎日みているその人と目があった。

「レイアに新聞買わされたから読んでたの」

「あはは…実は僕もさっき」

脇に挟んでいた同じものに私たちは笑いあった。少しだけ頭の中のもやもやが薄れるのを感じる。誰かと話しているときってそのことに集中できるから好き。
ベンチをひとりで独占していたけれど端に寄って座る?と手で促した。
ありがとうと腰を下ろした彼が新聞を持っているのならサプライズで何かしてあげようと言う計画もだめだろう。すぐに「ああ、人気投票のやつ?ありがとう」となるだろうし。

(なんか一人でからまわってるな…)

まあ、それが私らしい、なのかもしれないけど。
もう色んな案を思いつくほど柔らかい脳みそは残っていないからそのまま直接ジュードに訊くことにした。

「ねえ、三位入賞お祝いに何かほしいものとかある?」

目線は新聞からずらさずに、適当な記事に目を向けた振りをして彼の返答を待った。ジュードも同じように新聞を見ながらその表情は何かを考えているようで。絶対文字は頭に入ってないだろうなと思う。

「僕はファルスが傍に居てくれるだけでいいよ」

「それって特別なことしてない」

「特別なこと?えーと…じゃあ、」

と一言区切って新聞をたたんだ。こてんと私の肩に彼の頭が乗っかる。体重がかかって少し重たい。角度からして上目遣いの彼は少し楽しそうに笑う。
同じ16歳なはずなのに彼の方が大人の色気を漂わせていて。なんかずるい。



(なんか心臓ばくばく言ってるし……!)



一枚上手。
(皆のことよりも少しでいいから僕のことを考えて?)(もとからあなたのことばかり考えているなんていえない状況)


※ 人気投票三位記念

2014.6/26


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