すっぽかされました。

貴方はアルヴィン×ファルスで『大切だったはずなのに』をお題にして140文字SSを書いてください。 http://shindanmaker.com/375517
(140字でおさませる気もな)


※分史世界


自分にしては珍しく怒っている。怒りのせいで研究にも手付かずだ。マキさんやバランさんまでもが心配してくれるが今はその言葉ですら私の怒りのボルテージがあげられてしまう。はぁ、とりあえず研究所をでたほうが良さそうだ。

冷たい風に当たって少しだけ落ち着いた頭で考えてGHSを取り出した。待ち受けの彼を見て、ため息。何の連絡もない。
前から約束していたデートする予定だったのに。待ち合わせの時間になってもこない。詫びの連絡一つもない。で、気づけば次の日。寝ずの番を過ごし現在ひとりで待ちぼうけを喰らった私の目の下には立派な隈の姿。

最近結構すっぽかされる。彼はその度「商談」って理由付けるけど実のところそうでないのは知っている。ユルゲンスさんから話聞いたのだもん百パーセントなのだ。
何のために嘘ついているのかな。浮気…?まあ、アルヴィンにとって私なんて子供みたいなものなんだろうけど。
………だめだ、うじうじとかんがえていたらカビでも生えてきそう。私は臆病者だから訊けないのだ。彼が話してくれるのを待つしかい。

(終わりにしたほうがいいのかな……)

クレインさんに相談したときのことを思い出した。そんな思いをするくらいならきっぱり関係を終わらせてしまうのも一つの手だよと言ってくれた彼の言葉。だけど終わらせたくない、今の私にとっての大半の心の支えなんだ。年上といっても気兼ねなく話のできる、本音でぶつかることのできる人なんだ。
心の中の葛藤。自然と涙がこぼれ落ちた。

「ファルス!」

泥まみれ傷だらけの約束破り魔が荒々しい呼吸をしながら走ってくる。正直な感想格好良くない。一年前の飄々とした表情で人をだましにだましていたときのほうがよほど格好良かった。
彼は出会い頭に「悪かった」と心のこもっているのかそうでないのか分からない言葉で下手に出て次に私の機嫌を伺いはじめる。ぐりぐりと白衣で涙を拭い、いつものように「遅いよ」そう言った。白々しい、白くて素知らぬ顔をする。
大切だから、この関係が壊れるのが嫌だから精一杯の行動だ。

「なに。また商談が長引いたの?」

「あ、ああ。そうだな」

「一日またぐ位長い商談だったんだね。さぞかしいい結果に終わったんでしょ」

目が泳いでいる彼は本当、去年とは違う。
皆変わっていく。私の知らない自分に変わっていく。あの旅を終えた私たちはそれぞれの道へと進みだして少しの間は連絡を取り合っていたけれど音沙汰もなくなってきて。
アルヴィンとのこともそう。彼にも彼の成すべき事が、あるんだろうけど。
胸にぽっかり穴があいてしまったみたい。
大切だったはずなのにどんどん抜け落ちていっちゃう。いつか皆と一緒にいた時間までもがなかったことになっちゃいそうで、恐い。
だって、出会う度に彼の私を見る目が変わっているから。
寂しいものをみるような目で見てくるものね。「何かあった?」そう聞きたい言葉が口から出てこない。

「ファルス」

ぎゅうっと抱きしめられては薄汚れたスーツに顔をうずめた。暖かい。
アルヴィンは突然不思議なことを口にした。

「お前さ…実は男だったとか、ないよな?」

きつく抱きしめられていて顔は見えないけれど。一体何を言いたいのだろう。
男?確かに胸はミラと比べるとこぶりだけどまだ大きくなる可能性だってあるんだけど。

「やっぱりアルヴィンは胸がおっきい方が好きなの?」

「いや、そうじゃなくてさ。んー…ま、もうちょっとおっきくなってくれれば嬉しいけれど」

抱きしめていた腕がとかれ、服の上からぴとりと胸を触られた。むかついたので腕を払って拳骨ひとつお見舞いしてやる。
そもそも私は怒っているのだ。約束を破る奴の成されるがままなんてなるもんか。
その光景をみていたらしいバランさんは見かねて声をかけるまであと少し。


「ちょっとお二人さん、お熱いのはいいけど研究所の前でなにやってるの。場所くらい考えてよね」





結局逃げ続けることしかできない
(史上最大の落とし物)(それは大切だったはずなのに、拾い上げてくれる人すらいない可哀想なもの)

2014.6/23

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