それは一瞬の出来事。

貴方はジュード×ファルスで『どこかで響いた銃声』をお題にして140文字SSを書いてください。 http://shindanmaker.com/375517
(140字でおさまるわけないです、)


ルドガーの頼みと言うこともあって只今分史世界。ルドガーとエルの相棒コンビはオルダ宮の方へ消えていった。取り残された私は空を見上げる。断界殻(シェル)が消えていないリーゼ・マクシアをみるのはとても懐かしい。
だけど断界殻が消えていないという事はこの世界の私…いや、私の知る人たちは私が今感じているこの思いを知らない人々なんだろうな、って思うとどう接していいものか。

(まあ、接する展開がないことを祈るしかないよね)

眼鏡にぱっつんの前髪。懐かしい衣装を纏った私はひとり、イル・ファンで事情聴取をしていた。なんでまた『パスカル』という衣装を着ているのか?その疑問に対する答えは簡単だ。ここがイル・ファンだから。断界殻が消えていないという事は多分彼はあの時ミラに会うことが無かったのだろう。いや、会っていたとしても私や正史世界のジュードのように前には進めていないのだ。途中で終わってしまった世界。中途半端で危ない世界。
この世界の誰かが私を知っているかもしれない。人数も不揃いの今回の任務。ルドガーの一応の対策として懐かしの変装をしているのだった、イエーイ、トロピカルヤッホー。

話を聞けば案の定、変な予感が当たった。街の人々は共通としてこの街の若いお医者さんの話をしてくれる。医学校卒業後にみるみるうちに人々を不治の病から治していく様はまるでゴッドハンド。地位は十六歳にしての准教授。まるで自分のことのように誇らしく語る人は少なくなかった。
それが誰なのか検討はつく。噂の彼は今タリム医学校に居るらしい。

ルドガーに一言メールを送ろうとしてそこで気づく。電波がない。そもそもあたりまえだ。断界殻があるということはエレンピオスの技術を持ち得ても使う手段がないのだから。一瞬悩んでタリム医学校へと向かった。
なんなら自分の目で確認してからルドガーに報告するのもありだろう。この時点では時歪の因子が人なのか物なのか判断できない。できるだけの調査をと、銃杖を確認して中へと入る。

中は女性患者で賑わっていた。まるで人気アイドルのコンサートに来ているみたいな感じ。だがそのおかげで警備は手薄。関係者しか通れない道もあっさりと通ることができた。念の為パスカルの衣装の上からいつもの白衣を羽織って歩く。迷うことなくいつもの病室へ。研究生の視線がたまに刺さるがいちいち気にしても居られない。

目的の場所へたどり着き、静かにドアノブを回して中へと入り込む。鍵は開いていたのに電気がついていない。壁にもたれるようにして夜目に慣れるを待った。徐々に目も暗さに慣れていき、壁づたいに静かに歩いていく。元凶となる人は机で作業をしている途中で寝てしまっているよう。静かな寝息が耳に入ってきた。

(流石に触ったら起きるよね……)

仕方ないので机の上に置いてある資料や文献に手をかけた。医療向けのそれらにざっと目を通した後に机の上にまだ物が乗っかっているのに気づく。これは…、医療用算譜法(ジンテクス)?いや、父さんのとは少し違う。どちらかというと正史世界のエレンピオスで最近導入されている医療黒匣に近い形をしていた。独学でこれだけの物を作るのはさすがだと思うけれど、流石に研究材料もコストも足らないのか穴だらけの技術だった。マナの消費量が半端ない。このままではこの世界のマナもすぐに底をついてしまう。これはいつ壊れてもおかしくない。そんな状況を確認していたとき。

「……誰っ!?」

「っ……!」

机に向かってうつ伏せで寝ていたはずの彼はお得意の集中回避で部屋の明かりをつけた。いきなりの光に目が追いつかずその怪しい物をもったまま顔を隠す。その間にジュードは戦闘態勢を整えている。背中越しに隠していた銃杖を手にとり、眩む視界に必死に構えた。

「ねえねえ、ジュード・マティスくん。これ、キミが作ったの?」

「……そうだけど。それが?」

「リーゼ・マクシアに黒匣技術が発達しているようには見えなかったけれど…アルクノアからでも情報売ってもらったって事かな」

リーゼ・マクシア嫌いの奴らが売るとは到底思えないけど。そう頭の片隅でぼやいているとピンっと繋がる感覚がした。所謂リンク状態。近くにルドガーが来ているのだろう。私、思いを伝えるんだ環で一方的な指示を彼にだし、ジュードとの話を続けた。

「それの作り方の基本原理を教えてくれたのはアルヴィンって人だよ。…でもなんでそんなこと訊くの?それとっても必要なものだから返してほしいんだけど」

アルヴィンか。確かに彼なら品によっては口が軽そうだな。高度な精霊技術と黒匣技術、それらを駆使してのゴッドハンド。だけどこの医療黒匣を返すわけにはいかない。電気がついてよくみえるようになった。これが今回の時歪の因子、ルドガーに壊してもらわねばかえることができない。

「ごめんなさい、それはできない」

白衣のポケットの中にしまい、光にも慣れた目でジュードへと武器を構えた。私の知るジュードとは違う、その人は髪型から服装まで昔の写真を見せられたかのよう。未だに知っている人に武器を構えるのは躊躇しがちな私だが、今回は一人。そんなことも言ってられない。
彼も拳をつくり、飛び出してくる。それを交わしてこの狭い病室でルドガーがくる時間を稼いだ。銃杖をもったままだがなるべく騒ぎは起こしたくない。精霊術はおろか銃としての機能もあまり成していないそれを棍に見たてて戦う。それでも戦いにくい。

次第に追いやられていくのが分かり、仕方なしに銃を放つ。それは彼の肩口をかすり、壁を凹ませる。騒ぎになるのも時間の問題。
狙いを定めて、一発で終わらせようと決めた。



「さよならジュード」



どこかで響いた銃声
(私が引き金を引く前にあなたは私に向かって崩れ落ちる)(開いたドアの奥から仲間が銃を構えていた)(死んだ、その言葉だけが重くのしかかった)

2014.6/16

- 7 -

[*前] | [次#]

- back -

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -