体の自由奪われてないんだけどね。

あなたにピッタリなキスは…誰もいない教室で体の自由を奪われた状態でされるキスです。 #loveeers http://shindanmaker.com/265942


※学パロ(分史世界/別)注意


なんでこうもまあ捕まっちゃうんだか。
日直をやる日はどうも先生に声がかかってしまうな。こういうときに限って変に雑用ばっかり任せるんだもん。本当、やんなっちゃう。
夕暮れ時の廊下を一人寂しく歩く。もう皆は帰ったことだろう。率先して手伝うと言ってくれた皆を帰したのは言うまでもなく私なのだから。
いつもは周りがにぎやかでこういう風には感じなかったけど廊下に一人っきりでいると世界に取り残されちゃったみたいに感じた。部活動に取り組んでいる声が外から聞こえて現実が戻ってくる。何を馬鹿なこと言ってんだろう、皆が居なくなることなんてないのにね。

「ファルス」

私の名前を呼ばれた。聞き覚えがあるような感じはするのだけど振り向いてみれば知らない人。他校生だろうか。制帽にサスペンダー?今時珍しい。

「………どこかでお会いしましたか?」

あまり上から下へと見続けてしまうのは失礼だろうと多少の警戒をしながらも声をかけた。辛そうな表情を隠して笑う。きっとそんな彼のことが放っておけなくなったのだと思う。
一向に喋ろうとしない彼にかまわず時間が過ぎていく。もう少ししたらバスケ部が校内を走り込む時間のはず。すみませんと彼の手を取り、自分の教室へと連れやった。幸いにも教室は無人。部活が終わるであろう時間までまだ30分以上もあるわけだし、それまでにはなんとかなるだろう。

「えっと…失礼ですがあなたのお名前は」

「ルドガー。ルドガー・ウィル・クルスニク」

名前を言われたがピンとこない。やはり私の記憶にルドガーという存在は居ないらしい。空いた席に座るよう促してその前の席に私も座る。後ろの席を振り返るような形でお話ししようと思ったのだが、どうも会話が成り立たない。彼が俯いたまま喋ろうともしないのだ。
困ったな…このままなら関わらないでさっさと帰ってしまうべきだったろうか。

「ファルス…さんは、この世界が楽しいか?」

「え、ん?世界?規模が広いな……」

学校生活が楽しいと問われるのならまだイメージはわくが、世界と言われても。どうなんだろう。私の住む街では戦争もない。経済環境も先行き暗いわけでもない。国外へ進出している企業も沢山あるし強いて言うならば温暖化という問題が懸念されている程度の事だ。

「不自由はないですけど…」

この答えであっているのだろうか。問題の意図がいっこうに見えない。そうか、と頷いてまた悲しそうに微笑んだ。なぜか胸が苦しくなる。悲痛な笑みから救ってあげたい、そんな気持ち。言葉より先に手がでていて気がつけば制帽を取り上げて頭を撫でていた。

「あっ…ごめんなさい。なんか、手が勝手に」

ぱっと手を離したが、その手を取られてしまい逆に引き寄せられた。ガタガタッと机と椅子が暴れる中目の前にルドガーさんの顔。閉じた唇を舌で割られ、なされるがまま身を預けてしまう。どうしてなのか分からないけれど。掴まれた腕が痛い。今の彼の気持ちが込められているような痛み。私は振り払うこともせず、反対の手で頭を撫でる。口内を侵されて、息が苦しくなって。でも貪るような彼に「止めて」の一つも言うことができなかった。


「すまない……」

しょぼんと頭を下げた彼がなんだか面白くて笑ってしまった。だって今の今まで深いキスをしていたのにいきなり落ち込むのよ。ギャップ萌えとかそういうたぐいの感情が芽生えてしまいそう。

「ファルス…できれば俺たちの世界に、」

言葉の途中に彼のGHSが着信を告げる。どうぞって促して彼は電話にでる。スピーカーなので話し声が筒抜けの中、私は聞かないように違うことを、世界について考えた。俺たちの世界、確かに彼はそう言った。この世界が楽しいかと訊いたのはもしかしたら別の世界の人だから?……いやいや、まって。別の世界ってなによ。宇宙へ向かった人がよくテレビで報道されているけど帰還した後に他の惑星に人が居るだなんて情報入ったことない。

ルドガー・ウィル・クルスニク。一体彼は何者なんだろうか。

『ルドガー!時歪の因子みつかったって!今からしょくいんしつ、ってとこ来て!』

「職員室……」

「…よければ私が案内しようか?」

電話はすでに切れており、二人だけの空間へと戻っている。だがさっきとは、状況が変わってしまったのだけは私でも分かる。
ただ事ではない何かがあるのだろう。これも何かの縁。協力しないわけにはいかない。
なんだかどこかでそんなことを思っていた感じがする。さっきから自分の何かがおかしい。口とは反して体はこの場から離れたくないというように中々一歩が踏み出せなかった。

いいのか?と言う彼に勿論と返し、重い腰をあげた。職員室は今いる教室の階にある。短い道のりが長く感じて。歩く度に「行っちゃだめ!」って警報が頭に鳴り響いて。でも自分の言った言葉に責任は持たなきゃ。学校の一生徒として職員室に案内くらいしてあげなきゃ。
曲がり角を左へ。目の前に職員室があった。その前に見知った後ろ姿が大集合している。先に帰ってて。そうやって帰したはずの人たちだ。

「……ここまででいいかな。私はこの先に行っちゃだめだよね」

「ファルス…、」

「なんでだろ。私知ってる。目の前の人たちは確かに私の知るその人たちそっくりだけど知らない人だってこと」

脳裏にうっすらとした記憶が表れる。似たようなこと前にもあった。このまま出て行ってしまえば敵意むき出しの顔でみられてしまうのも。ルドガーさんが彼らを率いていることも。彼が何らかの目的で何かをしていることを。思い出したくない。思い出したら私平静でいられないもの。

「ありがとう、ファルス」

「…お礼の言われるようなことしてないよ。私の気が変わらないうちにはやく行って」

一歩間違えたら彼らに手をかけなきゃいけない。そんな感じ。私の住む日常が死と隣り合わせな訳もなく、殺す殺されるといった世の中ではないのだ。多分止めにいっても返り討ちに会うだけだろう。悔しいけど、私じゃなにもできない。

「おたくら何やってんだ、んなとこで」

「あ、アルヴィン」

私たちの後ろ姿をみて声をかけてきたアルヴィンは「先生をつけろ」とプリントを丸めて頭に叩き落とす。ポンって音をたてて少ししてから制服の違うルドガーに視線を向ける。だらだらと時間を進めるのは気が進まない。この場から早く離れたいがためにアルヴィンの手をとって職員室とは反対の方へと歩き出した。



「ねえ、アルヴィン。最期は私の隣にいて」


速まる鼓動、戻らぬ時間
(『前』とは違う、私はひとりじゃないの)

2014.5/20

(正史世界でのファルス死亡ルート)
(学パロでも正史世界と分史世界があったらこんな感じ?)


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