確かな友情、仲間と私

[heroine side]

ルドガーたちと話を付けた後私たちはサマンガン海停行きの船に乗った。
いつもは気にならない船旅、今日に限って長く感じてしまうのは自分の死が宣告されているからなのかそれとも成り行きとはいえ私の見知った顔をしている他人と行動を共にしなければならないからなのか、分からないけれど。

同室となったミラとはとくに会話もなく気まずい雰囲気が漂っているままだ。とりあえず私はGHSにたまった迷惑メールを消去する作業から取りかかる。
とはいえ実際多いのは何かしらメル友となってしまったイバルからのものであってタイムラインのごとく何かあったら報告してくる彼からのつぶやきの一言一言に度々返すのは難しい……というか正直面倒になったから夜にまとめて返信しているわけなのだ。

本当くだらないことばかり。いじめられている子供を守ってやったぞ!とか魔物をコテンパンにしてやったぞ!とか、なんて言うかこういうメール見てると平和だなって素直に思えた。
流石の今日は平和的感想はなかったわけで。
メールに私の感情とは真逆の言葉をすらすらとのせていった。

送信をし、すれ違いにメールを受信、またしてもイバル。今どこにいる?との質問に私は簡潔にサマンガン海停行きの船と送り返した。

「ねえ、ファルス」

パタンとGHSを閉じたとき、ミラの口が開かれる。どうして自分の世界を躊躇せずに破壊しようと言えるのかという話だ。
私と同じように別の世界の住人らしいミラはきっと民という大きなものを抱えているから皆の未来を壊されたことを悔やんでいるのだと思う。
私はちっぽけな人間だから。私を見てくれる大切な仲間がいなければそんな世界なくなってもいい。
結局私はひとりぼっちじゃ生きていけない弱虫で、死にたがりだ。

死んだら何も考えなくて済む、辛いことを考えるなんてまっぴらごめんよ。と言い聞かせても昨日までの出来事が忘れられない。笑いあえた皆との絆、例えそれが偽物が集まった絆だったとしても私たちにとっては本物そのものだったはずなのに。
本当の本物には一瞬のあらがう隙間もなく、偽物は消されてしまった。皆とお別れも何もできない。死体が残るわけではないから埋葬もできないし。残ったのは虚しい気持ち。

「………泣かせるつもりはなかったの、ごめんなさい……、」

別にミラのせいじゃないよ。口には出さなかったけれど。私はこれ以上くしゃくしゃな顔を見せたくなかったので布団をかぶる。我慢していた嗚咽が漏れてしまった。
ねえアルヴィン。女の子が泣いていいのは失恋したときだけじゃなかったの?私、皆にふられちゃったよ…バホー。


結局ろくに寝ることもできなかった私は顔を洗ってもシャキッとできない真っ赤な目を見られないように皆と少し距離をとって歩くことにする。
サマンガン海停に降り立ったその時、空中から爆転を決めて現れたイバルに素直に驚きを隠せない。

「イバル、どうしてここに……!」

まだ船の中に居るミラをみたら血相を変えてしまうことだろう。とりあえず私はサマンガン街道へ向けて先に歩きだす。勿論私に用が会ってのことだろう、隣を歩くそいつは気にもとめた様子はない。
GHSを開いて連絡が完全に繋がるレイアに向けてミラをイバルの見えないところに隠しておいてと送っておいた。

「このイバル様がわざわざ貴様に届け物を持ってきてやったわけだ!」

渡されたそれは確実に研究所に置いてきたはずの白衣。いやいやいやイバルさん。あんたそんなことのために朝一から爆転披露の上での挨拶をしに来たってんですか。普通じゃないよ、それ。
きちんとアイロン掛けもしてくれたらしいその白衣を羽織るとほのかに柔軟剤の香りがした。自分のものなはずなのに自分のじゃない気がして照れくさくなる。

「ん、んん?」

「……な、なにかあった?」

「どうしてそんなに目を真っ赤にはらしているんだ?」

両手で私の顔をがっしりホールド。間近でじろじろと見られるは恥ずかしい。それだけではない、私の視界は固定されていてイバルしか見えないが多分あの人たちはこの場面をがっちりと目撃していることだろう。

そんな生き恥これ以上さらしたくないっ………!



「覚悟しなさいよね……、」



これが私の殺劇舞荒拳!
(べ、別に、照れ隠しじゃないんだからね!)

2013.8/21


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