[jude side]
手分けして捜索したが中々見つからない、中々連絡もない。地理の強い僕はルドガー、エルとミラを連れて街から結構離れたところを捜索していた。ルルにもネコ派遣を頼んである、一向に連絡はないみたいだけれど。
…不安ばかりが募る。僕の心を表しているように空はどんどん分厚い雲に覆われてきていて。そのときミラさんが僕の名前を呼んだ。
「ちょっとあれ、子供じゃない?」
指さす先から息を切らして走ってきた少年は僕たちを見るなり「助けて!」とカラカラな声を振り絞っていた。
「あっちにでっかい魔物が!ねーちゃんがいるんだ!」
人差し指で指し示していた少年はサイズの大きいグローブを手にしていた。よくみていた模様のグローブ。一気に背中が冷えた。ミラさんに少年を預け言われた方向へと走り出した。もう、がむしゃらも良いところ。
ルドガーが止める声をきいたけれど、聞かないことにした。だってギガントモンスター相手に一人でなんて太刀打ちできるはずもない。ビリビリと空気が波打っているような感覚めがけて、小さく地面が揺れている感覚めがけて、とにかく走った。
(ジュード…、)
「!、ファルス!?」
確かに聞こえたか細い彼女の声。
リンク状態ではない。ただ彼女は僕の名前を呼んだ、そう思えた。何の確証もない、何の信憑性のない話なんだけれどはやく無事を確認したくて気が焦ってしまう。
そして見えた、倒れ込んだ彼女の姿を。
ボロボロの姿でとどめを刺されそうになっているその瞬間を。
「!」
一瞬だった。自分の体にかけてあったリミッターが外れたような感覚。ファルスを抱えてその場から離れる時間は確かになかったはずなのに。僕の両手にはぐったりとした少女がそこにいて。十分離れた位置で魔物の攻撃が地面へと到達した。
「ジュード!」
三人が追いつき、エルがファルスを守るよ!と彼女のもとで彼女なりのファイティングポーズをとる。心許ないといえばそうなのだが、三人係で向かわなければ倒せるかどうかも分からない。なるべく遠くまで離れずつかず、ということで僕たちは頷いた。
「それにしてもなんだ、あの魔物」
「ユニセロスという魔物よ。ま、最も私が出会ったのも二百年くらい前の話なるけどね」
二百年も前の魔物がどうしてか現れた。
この前のアルヴィンとファルスが対峙した魔物もみたことがない。ミラさんが言うに時空が歪んでいる、かもしれないとのこと。
原因は、分からない、分かりたくもない。
フッと体が重くなる。もともとの力量まで戻された感覚。自分の手元に大切な者はいる。これ以上ないくらいの安心感。先程の力はきっと今の僕じゃだすことできない、そんな気がして。ルドガーとミラさんがリンクを繋いでそれぞれ攻撃を始めた。僕も二人にならって拳を振り上げる。
ユニセロスが横たわる頃には皆駆けつけてくれていた。エリーゼやレイアがファルスに対して治療を施していたが危険な状況だということは否めない。それほどに赤黒く血塗られていたのだ、普通ならもう手遅れだと手を離している。
「僕の家に向かおう。あそこなら治療できる」
弱々しいが脈はある。まだ、まだ間に合う。がたいのいいアルヴィンが彼女を背負って町へと足を進めた。身長が高いって羨ましい。僕だって鍛えてはいるけれど身長だってのびてはいるけれど、上には上がいてこういうときに役に立っていない。
皆の足に着いていけなくなったエルがルドガーにおぶってもらった。ルドガーも細身かと思えば筋肉はついているし、僕よりも背は高い。年をとればこれくらいにはなるさ、って返されそうだけど僕は今彼女のために何かしてあげたかった。
ただ、側にいてあげることしかできない無力な自分が悔しかった。
エルが小さく僕の名前を呼んで今にも泣きそうな顔でこぼす。
「ジュード。絶対ファルスたすけてあげてね……?」
僕の役割
(絶対に死なせないよ、そうすんなり言いきった僕自身が驚いた)
2014.2/24
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