好きって何だろう

[heroine side]

電話が終わった。なんだか微妙な空気。思えば私、前々から結構口下手だって指摘されていた気もする。論文などの説明は得意だけど自分の思いを伝えるのは下手だよねって。
定かなことをそのまま伝えればいいわけじゃない。そもそも定かなことなんてない。思いをまとめて伝えることは難しい。まっすぐ伝えるのは確かに悪くないのだろうけれどそれでは誰かを傷つけてしまうやもしれない。

あー…と声に出してため息。布団の中でうずくまっているときに大浴場で入浴していたエリーゼが部屋にあてがわれていたシャワールームに入っていたはずのアルヴィンと一緒に現れる。

「ファルス……お話、終わりました?」

「ん…一応」

「その顔だとしこりが残ってしまった感じだな。お前もジュードも商人にはむいてねーよ」

「別に商人になろうとも思わないもん。私には私のやれることをするだけ」

そこまで言って謝る。これだとやつあたりだ。何に対してのやつあたりなのか分からないけれど苛々して。そんな感情を他人にぶつけるのは筋違いも良いところ。
二人は気にしてないようでそれぞれのベッドの上に座った。
気遣わせといて仇で返した自分に腹が立つ。
声に出さないようなため息、上からティポがやってきた。

「いいかげんにしろーっ!」

「んがっ、んんんんっ!?」

いつもの力以上で私の首もとまで食らいつく。引っかかってとりにくい、焦って息をするのさえ苦しく感じる。ティポは、いやエリーゼは「そんなにうじうじしているファルスはみたくありません!」という。

「ジュードとどんな会話をしたのかは知りませんが、貴方たち二人はもう少し素直に発言した方がいいと思います!」

「エリーゼのいうとーり、直球勝負でー!」

後悔するくらいなら伝わらなくても良いからまっすぐ発言しなさい。とのことだった。
まるで私のお姉さんみたい。勿論実際は私の方が長く生きているけれどね。
アルヴィンもそれに関しては頷いていて、私にトゲを刺すようにいう。

「そもそもおたくらはいろいろ考えるから空まわるよな。他人のことはずばっと言えるくせに自分のことだけうまく言えないなんて口下手じゃなくて臆病者なだけだろ」

それは一番自分の気にしているところなのに。というか臆病とは大抵の人間抱えていると思われる。アルヴィンだってきっとそう。いまはそう言えるだろうけど自分に不利な状況のときは私と変わんないだろうさ。
素直。素直ってなんだったっけね。毎日ひねくれていたら素直なんて分かんない。

「ファルスはー、」

ジュードのことどう思ってるの?くわっと頭から離れてティポが言う。素直に。ジュードのことどう思っているのかいえということだろう。
私は考える。彼のことを。どう思っているのかを。
浮かんだ言葉をそのまま音に乗せてみる。

「お人好し」

「変わった人」

ジュード、ジュード。
嫌いだった人、今は別に嫌いじゃないけど。好きかっていわれたら違うと思う。なんていうかそういうときめき?みたいのは感じられなかったし。
なんだかんだで気を使わせてしまっていて、そこが嫌なんだ。言っても多分直らないのだろうけどね。
先ほどの会話を思いだす。私の声を聞いて彼は何を思ったのだろう。私は、私は……、

「ミラのこと考えているくせに私に連絡してくるとか意味わかんない」

言って口を押さえた、意味わかんないって今の発言の方が意味わかんないよ私。
これじゃまるで嫉妬じゃない。はずかしいから布団に潜って丸くなる。二人の楽しそうな声が聞こえたけれどそれは総無視の方向で。



「もう寝る!おやすみなさい!」



素直な気持ち。
(別にジュードが誰のことを考えていたって……、)

2013.10/22


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