[heroine side]
結果から話すととりあえずムーンライトを渡すことによって解決には至りました。が、しかしジュードの機嫌は頗る悪いようでして。勿論、理由は分かります。偽マクスウェル様の一件でしょう。あの後、怒りにまかせてミラの話を延々とし始めるジュードに此処一帯はたじたじ。勿論それは敵味方関係なく、で。
私やミラはこの世界のミラのことを知らないし。ルドガーもエルもエレンピオスにミラが来ていてもみたことがなかったそうなので。
そう、だれも彼を止めることはできなかったのでした。
「ジュード…ミラについてくわしいんだね。エルあんなに熱くなってるジュードはじめて」
「俺も。……お前は?」
あえて名前をぼかしてくれたんだろうが、どうして流れで私に聞くんだ。といいたい気持ちを押さえ込み私は本当のことを交えてそれっぽく返答することしかできなかった。
「あたし?いやーあんなにあっつい人みたことないなー」
「あら…そういえば普通に馴染んじゃっていたから全然気にしてなかったけれど、アナタ……名前なんて言うのよ」
「んー?あーあたしパスカル!よろしくー」
この回答は前々から考えていたから大丈夫。ルドガーがそれまた楽しそうに微笑む、ムカつく。
そろそろ時間帯も夜だしアルヴィンとエリーゼもホテルに戻っていることだろうということで私は皆と別行動。と思っていた。
ついてくる皆、まさかの隣のホテルに泊まるというわけらしい。同じホテルでなくてよかったとそれだけを心の底から思った。アルヴィンやエリーゼと一緒にいるところをみられたらもう隠しようもない。
「そうだルドガー。ルドガーたちはこれからどうするの?」
「ん?……とりあえず近辺のクエストでもやってノヴァから言われる前に少しでも借金返済しときたいな…って。ジュードは?」
「僕は、ル・ロンドへ行こうと思ってる」
はいっ!?と心の声が大きくでてしまい、それに伴いルドガーがビクッと震えた。ごめん、今のはわざとじゃない。でもこれは参った、実のところ私も次の行き先はル・ロンドだったのだ。
目的は勿論、自分の家だった場所を一目でいいから見たかったため。若干ホームシックになっているなんて口が裂けてもいえない。帰る家もないし。
(ルドガーお願い。どうにか私の乗る船と時間をずらしてくれない?)
ちなみに私らが乗るのは朝一本目の船。朝っぱらと言うこともあり余裕でチケットはゲットできた。ルドガーが「できることならジュードにも手伝ってほしかったんだけどな…」とフォローをいれてくれる。そしてお人好しなあなたはそれを快く了承するのだった。
「ふーん。私だけじゃ戦力不足ってわけ」
「えっ!?……あ、いや…そうじゃなくて」
ジュードは悪い顔しなかったが逆にミラが機嫌を損ねる。私は何もいえない。彼女の心情が分からないでもないけれど私は今「パスカル」なのだから。
腕を組んだ彼女はルドガーから顔を背けて続けた。
「別にいいんだけどね。どうせ私なんかじゃ本物のミラ様には適わないだろうし」
「「そんなことないよ」」
え……。思わずジュードと目を合わせてしまう。ぱっと目をそらしてルドガーを壁にするように隠れた。
くわばらくわばら、気をつけなきゃ。
その後、ルドガーが私の言いたいことをまとめてくれたからミラも少しは落ち着いたみたい。
ミラは、彼女はきっとこの世界を嫌うことしかできないだろう。自分の今後が悟れてしまう世界だ。
ジュードがこの世界のミラ=マクスウェルについて語っていたとき、私は恐くて彼女をみることなんてできなかった。所詮彼が必要としているのは彼の知る彼女で。ミラが消えないとミラ=マクスウェルがこの世界にやって来れないことを知ったらどうするのだろう。
ジュードはウプサーラ湖の件に関与していなかったから知らないだろうけれど。
「エルはエルの知るミラじゃなきゃいやだよ!」
複雑な心情
(思いと裏腹な現実が憎い)
2013.10/16
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