[heroine side]
ハイファンに到着。そして数分後にはミッションコンプリート。宿屋の店主に話を聞くも無いと首を振られ途方に暮れそうになっていたときルドガーの元にルルがやってきたのである。
「ナァー」
こっちに来いと言わんばかりのこのネコさんの後を追っていくとそこには大量の素材が。ネコ派遣、今日はいつになく張り切っていたらしい。と、素材を回収したそのとき下から見覚えのある酒瓶が現れたではありませんか。
バーボン[ムーンライト]。呆気ない登場に私は一人「やったああああっ!」と素で喜んでしまった。もう万歳ものもいいところである。これであの人たちに謝ることもできる。まあ、マクスウェルと偽っていることはどうかと思うのだけれど、ぶつかって物を壊すのは悪いことだもんね。これからはなるべく気をつけるようにしなくちゃ。
拾おうと手を伸ばせど掴んだのは空気。先にルドガーが拾っていい笑顔でいう。
「よし、その偽物マクスウェル様に会いに行こう」
それに賛同するエルにミラ。私は必死に瓶を奪おうと手を伸ばすがかすめもしない。この時、初めて身長を恨んだ気がした。
うわ、まだラフォート研究所の前に凸凹パーティーの皆さんが突っ立っている。これで私が逃亡したら何時間も何日も何年間もあの人たちはそこで立ち続けてなければいけないのだけど。
あれよと指差せばルドガーが震えていて。確かに笑えると呟くのを聞き逃さなかった。
グラマラスなボディのお姉さんは私に気づいて一言目に「おそい!」二言目に「お酒はあったの!?」。隣でミラがため息を漏らす。相手にも聞こえるよう大きいため息だ。
「あんたが偽物マクスウェル様?マクスウェルって名乗るもんだからどういう人なのかと少し期待を馳せてしまったけれど」
とんだ期待はずれね。ミラを抑えてやりたい気持ち半分、その通り過ぎて何も言えないのも半分。まず隣のミラは怒りはするだろうけどここまで酒酒言わないだろう。そして使う用途は飲むんじゃなくて料理の隠し味…ちなみに私は料理酒多用するときが多いよ。
「ねえねえルドガー、この人ミラににてないよ?みんなこの世界のミラとそっくりだ!って言ってたよね。でも全然にてないよ?」
「ああ…全然似てないな。………なあ、もしかして周りにいる奴らは、」
「うーん…多分ルドガーの思ってるそれで当たってると思う」
ルドガーはまた笑いをこらえる。それくらいに酷いできなのだ。当の本人たちは似てない似てない言われて憤怒の表情。
「さっきから聞いてれば偽物偽物……なんで偽物だなんて言えるんだい!?」
「………こんな所で何やってるの?」
キレだすお姉さんの後ろから一番会いたくない人が登場。白衣の青年は扉の前を邪魔されていることに静かな怒りを覚えている模様。超恐い。私はルドガーの背中に隠れるように立った。勿論それはいつでも逃げ出せるように、ということだ。
数日ぶりのジュードは目が笑っていなかった。なんだかやつれているようにもみえる。家出してから数日で出会うとは思わなかったが、ラフォート研究所に泊まり込みをしなければならないほどのことがあったのだろうか。研究が進んだのならそれは私としても嬉しい話。勿論一研究者としての言葉だね。
周りを一通りみて、ため息を吐いた彼は蔑むような目で偽マクスウェルに説いた。いや、実際は真面目な顔なのだけど。なんだかそんな雰囲気を纏っていたのだ。
「すみませんが、扉の前で騒がれるのは迷惑です。騒ぐならもっと別の場所でお願いします」
「こいつ、誰に物言ってんだ!」
反論するのは凸凹パーティー同い年くらいの青年、偽ジュード(仮)。殴ろうと拳を振り出した彼の後ろを簡単にとって、「静かにしてください」と持っていた書類で痛くない程度に抑えて頭を叩いた。
集中回避、だなんて言葉をつけられたが実際私もよく使用してるしそこまで言うほど難しくない気もしているのだけど。まあ、できない人はできない、らしいね。ローエンはともかくアルヴィンもできなかった。まあこれは私の世界での話だけど。
「ちょっと待ちな!私は精霊の主、マクスウェル様だよ!?」
空気を読みなさい!
(………うん?)
2013.10/13
- 44 -
[*前] | [次#]