[heroine side]
イル・ファンに到着。私の知るものとほとんど変わらなくて心なしか落ち着いた。アルヴィンともエリーゼ一時解散してただいま一人という状況だからなおさら、である。
私の人生が変わったきっかけ。ミラとの出会い。全ての根源。
私は自然とミラとの初めての場所に向かっていた。
懐かしい、だなんて一年前の話なのに。この一年間、色々なことがあった。その前まではただの学生だったはずなのに、運命の転機と言うべきか。
まあ、この世界においてはミラとの出会いもないことになっているのだけれど。
一人しんみり。仲間が居るだけでも幸福ものなのに私ったら相変わらず欲張りね。
来た道を戻る。今日はイル・ファンの宿屋で一泊する予定。私はエリーゼの分も支払う、勿論アルヴィンのは支払わない。勝手に付いてきているのだ、それに彼のも払ったら明日確実に船に乗れない。
宿屋へと向かう私はよそ見をしていて。ラフォート研究所の中になんだか見覚えのある数人の顔を目にしてぎょっと目を見開いたとき、目の前まで来ていたらしい女性とぶつかってしまった。
彼女もよそ見していたのか双方尻餅をついて。ぐっしょりとぬれる感覚が脊髄を通って脳に伝わる。下を見れば瓶が割れているじゃないか。
「ちょっとあんた、気をつけて歩きなさいよ!」
「それより姐さん、酒が…酒が…!」
金髪の彼女を囲むように周りにいた人が駆け寄ってくる。その光景からして多分仲間かなんかなのだろう。私が人のこと言える立場かは置いといて、どうも凸凹パーティーだなって直球な感想が口にでそうになった。
金髪のグラマラスなお姉さん、同年代くらいの男の子とエルと同い年くらいの女の子にガリガリしたおじさん。
「ああ…私のバーボンが…、」
あまりのショックに放心状態。次の瞬間キッと睨みつけられ、私はまた事件に巻き込まれたと悟るしかなかった。ため息を飲み込んで眉を下げてこれからのことを考える。だってほら、私まだ未成年だし。
「おい、お前!この方を何方だと心得る!」
「え、……だれだろう?」
まるでイバルのような立ち振る舞い。金髪のお姉さんの一歩前で威張る彼が次に口にした言葉に私は場もわきまえず噴き出してしまうことになる。
「聞いて驚け!この方は精霊の主ことマクスウェル様なんだぞ!貴様のような平民如き一瞬で消し去ることもできる!」
「マ、クスウェル……、あなたが?………ふふ、」
いやいやいや、これは傑作級もいいところ。どこからどうみてもミラとは似ても似つかない残念な人間様だ。確かに世間に広まる噂としては大体あっているだろうけれど。本人とそして本人と瓜二つの彼女を知っている私からすれば笑うほかアクションをとることなどない。
「何を笑っているんでやんすかね……、姐さんここはビシッと言ってやってくださいよ」
ということはここにいる人はミラを含めたジュードたちってことだろうか。金髪の姉さんがミラならこのイバルみたいな人がジュードで少女はエル……いや、エリーゼかな。「やんす」口調のおじさんが…ローエンにしては若いしアルヴィン、を真似たのか。これは悲惨なアートだ。
「そうね。貴女みたいな人間、私の力を使えば一瞬でどうにかできるのだけど可哀想だからそれはやめたげる」
「は、はあ…」
「代わりにこれと同じお酒を買ってきなさい!今すぐ!」
とりあえず街の中を探してみたが、見つからない。こういうときルルが居たらネコ派遣を……と思って私は足を止めた。さきほど目を奪われたルドガー御一行。ルルももしかしたら居るかもしれない。踵を返してラフォート研究所へと早々とあるいた。
「あー!テレビのヒトー!」
その人たちはやってくる
(役作りは万全!)
2013.10/11
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