出会いと別れを噛みしめて

[heroine side]

ぐっすり眠れた私は体力完全回復と言ったところで。朝食もいただいてしまったこともあり、はやくこの場を去ろうと思うことまでいたる。このままこの屋敷にいたらするずると宿泊してしまうかもしれない、そう思ったからである。

「もう行っちゃうのね…寂しいわ」

「また近くに寄る機会があれば来てもいいですか?」

勿論よとサヨナラのハグを交わす。今度は正門から来てねと一言つけて。兵士には話を付けてくれるらしい。これ、友達の特権って奴かな。

エリーゼ、見送りに来てくれなかったな…とちょっと落ち込む中、私はイル・ファンに向けて進む。街を抜けたその先でその子はぬいぐるみとスーツ姿の男の人とお話しをしていた。二つに結った髪が風でなびいている、そんな姿を見て私は小さく笑った。

「何やってるのエリーゼ」

伊達眼鏡のブリッジを押さえて話せば振り返る二人と一つのぬいぐるみ。エリーゼは腰に手を当ててまるで子供を説教するようにいいました。

「勿論わたしもついて行くためです」

「僕もー!」

「俺もーってな」

悪乗りをするアルヴィンをバシッと叩く。エリーゼが弱くないのは分かっているけど、でもこんな道のりを歩かせたくない気持ちもあるわけで。帰りなさいと言いたいけど帰る気なさそう。肩からショルダーバッグをかけているあたり、行く気は満々といったところか。
ため息をはいて「無茶だけはしないでね?」と言えば呆れた目線。

「それはファルスのほうです!」


ガンダラ要塞までの道のりは賑やかだった。私とエリーゼとの会話にアルヴィンが茶々をいれてその言葉に喧嘩文句。みたいな会話ばかりだったけど。
たまに襲いかかってくる魔物。前衛はアルヴィン一人に任せて私は後方で銃杖の操作練習をすることに。これならレイアみたいな棍で戦えばよかったかもしれない。


「…………で。こうなってること、二人は知らなかったわけ?」

道中はよかったのだ。そう、途中までは。
ガンダラ要塞に到着。ところがどっこい、門は閉まりきっていた。どんどん叩けど応答なし。これは結局船でいけって話なのだろうか。正直かなりへこんだ。そしておなかも空いた。
仕方がないので、元の道を戻ろうと踵を返す。そして目に入ったマンホール。
いまの私はお金を使うよりも汚くなった方がましだという考えしかないのだけど。

「ねえ二人とも」


下水道の端を歩くこと十数分。出口が見えた。あれまこんな簡単に通り抜けることができようとは。もともと軍事的防備施設だったよね……、これでいいのか。

「アルヴィン先頭で、どうぞ」

因みに入るときは私、エリーゼ、アルヴィンの順。アルヴィンが最後でいいと言うもんだからエリーゼがぷんぷん怒る。私もその意味を含んでいったのだからエリーゼを止める気など毛頭ない。なんで怒る?と言った顔から状況を察した変態さんは困ったように笑った。

「アルヴィンは変態です!」

「悪かった、悪かったって。俺が先頭でいいですよエリーゼ姫」

その場のノリでかしこまって一例するアルヴィンの周りをぐるぐるまわりながら「アルヴィンのバホー!」と連呼するティポ。
下水道にティポの声が響く。反響する声の中で、何かのうなり声。………やばいんじゃない?

「ちょ、アルヴィン早く行って!」

水面が揺れる。静かだったそれからウォントが登場なさったのはエリーゼが途中まで登ったところの話だ。私は毎度の如く銃杖で威嚇するように狙って距離を離す。

「ファルス!」

上から覗きこむエリーゼ。登りきった彼女を確認した私も段差に足をかける。フック状の腕を振り下ろしたウォントの攻撃がふくらはぎをかすり、近くまで来ていたことを知った。やられた足をそのままウォントの頭めがけて右から左にかけて振ってやれば狭い壁に頭を打ちつけてその場に倒れ込む。



「よし、今のうちに!」



脱出成功!
(無茶しないでください!って怒られたけれど)

2013.10/2


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