新たな出会いを

[heroine side]

それから数回の戦闘を重ねて落ちていた誰かの袋の中からまだ食べれそうなサンドイッチを入手したのでそれを咀嚼。生き返った私はその勢いでカラハ・シャールまでとばしていく。

「翆緑の天帝、切り裂いてゴー!ってね」


カラハ・シャールに着いた私たちは解散となった。各々の目的を成し遂げるため、各々の使命のためと言うべきだろうか。にぎわった町並みは私の世界と変わることなく、商品の豊富さ、風車の周りの人の賑わい、相変わらずと表したいくらいだった。とあるものを購入し、GHSで自分の身だしなみを確認してクレインさん…いや、ドロッセルさんの住んでいる屋敷の方へと足を運ぶ。

勿論変わることなく門の前には兵士が配属されている、私はもとから正々堂々と赴く気はないので前にクレインさんから教わった抜け道を使って門の中へと侵入した。
案外簡単にできるものなのね…と一人、そんなことを思っていたら前の方からエリーゼが走ってきた。あわてて茂みに身を隠して通り過ぎるのを待った。

「ドロッセルー、どこですかー?」

「こっちにはいないみたいー」

かくれんぼ?だろうか。エリーゼとティポのコンビはそのまま姿を消した。今日はどうやら学校の方は休みだったらしい。なるほど、街のほうが賑わっているので気づけばよかった。気配を消して庭の方へと進めばそこにクレインさんは居た。この世界のクレインさんはどういう人だったのだろう。
持っていた一輪の花を墓石の前に並べてその場で手を合わせた。少ししてから踵を返す。

「あら、帰っちゃうの?」

ドロッセルさんの登場だ。私は思わず振り向いた。私が記憶しているドロッセルさんと変わりない、初めてここに訪れたときを思い出させるくらいだ。エリーゼや私たちと話をしたこと。いろいろと街の中を物色しまわったこと。そして討死したこと。
ふわりと笑う彼女の顔は兄の死を乗り越えた当主の顔。

「ども、おじゃましてます」

「門から入らないなんてどんな方かと思ったけれど兄のお客さんだったのね」

「………気づいていたのに墓の前まで何もしなかったんですね。命知らずの当主って言われません?」

残念ながら言われたことないわと笑うドロッセルさんは私の隣に立ち、クレインさんに宛てた一輪の花を拾い上げた。「これは大事に生けましょう」生きた命は最後まで大切にしようという、その想いには同感だ。

「そうだわ、今からお茶にしようと思っていたとこなの。あなたも一緒にどうかしら」

「折角ですけどまた今度」

そのお茶会にはかきっとエリーゼも居ることだろう。私は首を左右に振って元の道へと戻ろうとした。だって私のカラハ・シャールでの目的は果たしたのだから。

「あ、ドロッセルみつけました!」

「あーれー隣にいるのだれー?」

パタパタと駆け寄ってくる二人に自然と顔を背けるようにして離れることに成功、し損ねた。ティポが逃がさないぞーと言わんばかりに噛みついてきたからである。もがいて引っ張り出したティポの口の中で眼鏡がとれた。災難は加速するばかり、なんて表現を使ってもいいのやら。

「ファルス!?」

「そんな格好して何やってるのー?」

アタッチメントのぱっつんだけじゃエリーゼを騙すこともできずに、私はずいずいとドロッセルさんのお茶会へと巻き込まれるのだった。


「一人でここまで来たの?」

紅茶の香りを楽しみながらのお茶会で、ドロッセルさんは話を始める。エリーゼの知り合いと言うこともあり、丁重な扱いに肩がこりそう。
私は少し怒った顔を見せているエリーゼの顔を見てないふりをしてあくまでドロッセルさんに返事をする。ティポが私の視界を遮るように飛び回るのがちょっといらつくのだけれど。

「サマンガン海停行きの船でアルヴィンと会ったから彼と一緒に」

「ああ…!どこかでみたことがあると思ったらあの船の上の魔物を退治した事件の!」

どうやらやはりニュースになっているらしい。この調子だとジュードくんが見ていないという確率の方が低いだろう。頼むから私のこの変装が吉とでてくれれば助かる。



「ファルスの歩く先には事件ばっかり、ですね」



おこなの?
(ツーンとむくれるエリーゼさん)

2013.9/30


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