そんな関係

[heroine side]

サマンガン海停に到着した船の中からは安堵の声が漏れた。

私はあれからというもの自分の部屋よりアタッチメントを置き忘れたアルヴィンの部屋へと行ってしまい、部屋の外には船員たちの感極まった声で溢れかえってしまっているためでられない状況に。
アルヴィンから鏡を借りて装着。アルヴィンはアルヴィンでこれからの商談のために身だしなみを整えていた。この様子じゃカラハ・シャールに着くまでに一悶着はありそうだけどね。

「あ、アルヴィン怪我しちゃってる」

みると頬がミミズ腫れになっていた。指でなぞってあげれば元通り。こんなの朝飯前だ。どうだ、とまんざらでもない顔でふふんと笑えばアルヴィンは呆れたように懐から何かを取り出した。

「おたくも怪我してるだろ」

ビリッと開封されたそれを私のおでこに貼り付けた。絆創膏か、さすがエレンピオス人。風邪でめくれれば恥ずかしいが今はちょっと恥ずかしくなかった。

艦内放送が伝わった。どうやら無事に着いたようで、私たちは船を降りる。が、どうにもこうにもギャラリーが多くて話にならない。
なぜか何台ものカメラが向けられている。魔物退治ももう当たり前、というかここ最近研究そっちのけでジュードの目を盗んでは小遣い稼ぎばかりやっていたものだから日常に匹敵する程度になってしまった私としてはこの光景こそが異常に見えて思わず目が点。
困ったようにアルヴィンの斜め後ろを歩いた。

「あなた方が巨大な魔物を退治してくれたそうですが!」

「そのときの状況を詳しくお伝えください!」

ICレコーダーにマイクをつき向けられ、後ろからはカメラのフラッシュの嵐。真面目に回答すると完全仕事モードに入ってしまう。仕事モードでなら回答も悪くはないんだけど、素に戻るってことはどこかしらジュードに似ている部分が現れてしまうことになるわけで。

(これ完全にテレビに流されちゃうよね……、)

何とも答えにくい……と心中ため息。完全ぼやきだったがそれをくんでくれるのがアルヴィンである。彼は「彼女が疲れているので後にしてもらえませんか」と肩を抱いてアピールをする。しかもカメラに顔が映らないよう配慮もしてくれた。すごい、アルヴィンって結構いい人なんだ。驚愕。

取材陣から離れたあたりでポカリと殴られた。何で殴んのよ!と言えば今目にも驚くものをみた!って顔してたからと返される。言葉は通じなくても顔に表れていたのか、気をつけよう。

本来お昼はサマンガン海停の料理屋でとるつもりだったけれどどうやらそういう状況ではなさそうだ。私はつけられていないことを確認しながらも街道の方へと向かう。勿論隣を行く男も一緒。

「アルヴィンは海停に用はないの?」

「言ったろ。俺の用はカラハ・シャール。ファルスこそ何しに行くんだよ」

「………クレインさんのお墓参り、と生きていると言われているドロッセルさんの顔を遠めでもいいからみてみたいなって」

海停の領域から街道へと抜けた。
それからと言うもの私はなぜかアルヴィンにこのぷち家出の本当の理由を話していた。本当は誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
今回の旅の目的はこの世界のことを知ろう!という題名からなる自由な旅。似ているようできっと根本的に違うこともあるだろうし、皆ともつじつまがあっているようでその反対かもしれない。これから皆と行動することも多くなるにつれて変な誤解を抱き、何度も同じ説明をさせてしまうのはよくないと思ったからだ。
そのことを勢い任せで言うと「若いねえ」とおじさんくさい言葉が返ってきた。反応が気にくわなかったのでもっていた銃杖でバシッと腰あたりを叩く。もうちょっとノリを私くらいにあげてはもらえないだろうか。こちとら真剣なのだ。



「人がこの世界を好きになろうとしてんのにアルヴィンがこの世界のいいところを教えないでどうすんのよ」



旅は道連れ
(呆れるあなたはそれでも笑う)

2013.9/27


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