[heroine side]
ジュードくんと真っ正面向かって思いを伝えてみた。勿論それは半分くらいが嘘でもう半分くらいが本当な話。とりあえず結論、私が言いたいことはこういうことだ。
「私もひとりで外出したい」
おまえ外出してるじゃないかと言われるかもしれないがそれは私の家の鍵での話だ。ジュードくんはきっと私が家にいると思ってくれているだろう。もし行き会ったりしたら家の中がもぬけの殻じゃないと怒られそうだ。
そういうことを未然に防ぐため、私はジュードくんに伝えたのだ。もう私は怪我も完治しているし、それは分史世界へ行ったルドガーたちも証人になってくれているはず。
ジュードくんは「そろそろ言う頃だと思ってた」と奥へと消える。そして少ししたらリビングへ戻ってきた。その手にはしっかりと鍵が握られている。
「はい、合い鍵」
「ありがとうジュードくん、」
受け取ろうと手を伸ばせばくいっと鍵を自分の方へと戻した。渡す前にジュードくんからも言いたいことがあるようで。
「僕、前にルドガーとエルに言われたんだ。どうして君のことファルスさんって呼ぶの?って」
「……うん?」
「エルからしたら同じ家に住む人は家族なんだって。だからもっと遠慮しなくていい関係になりたいんだ」
それはジュードくんの気持ち、だろうか。
彼は私を家族というカテゴリーに加えたいのか。贅沢な話ね、本物の家族がいるのにそれに他人をも加えたいだなんて。
真っ黒な言葉が心中うずまく。所詮彼の言葉なんてただのお人好しからきている哀れな言葉にすぎない。
キミは一人なんでしょう。ずっと独りじゃ可哀想だから僕が身近な存在になってあげるよ。
どうせ上から目線の言葉だ。ジュードくんだってどうせその程度の人間だ。
相手のことを考えて言葉を選びなさいと母さんから習っているんだとしたらきっとジュードくんは私のことをちゃんと理解してくれていない。
確かに今の仲間も悪くないと思っているけれどそれは期間限定キャンペーンと同様。あと一週間も立たないうちに計画に出ようと思っているからの話でずっと一緒にいたら何がなんなのか理解に苦しむじゃない。
私のみたい笑顔は私の仲間の笑顔だ。
今の仲間の笑顔じゃない、守りたい者を見間違えるな。
───……見間違えるな。
「あははっ、なに。ジュードくんは家族がほしかったの?」
気づいたら笑っていた。家族がほしいなんて言うからだ。そんなジュードくんはまっすぐとした瞳を揺るがせることなくただただうんと頷いた。
「しかも私みたいなやつを」
笑いすぎて涙がでてくる。大粒の涙だ。
視界が歪んでジュードくんの顔すら見れない。
ほしかった、望んでいた私のなくなっていたもの。
仲間、家族、……私の居場所。
そんな言葉をかけられたら私だって欲張ってしまうじゃない。素っ気なく接してくれれば私だってそれなりに離れられたのに。本当、これだからお人好しって言われるのよ。
「ファルス…」
「貴方みたいな人を馬鹿っていうのよ…馬鹿、」
頭をなでる左手、腰を抱くようにそえる右手。彼の肩に顔をうずめた。
と、甘い展開はここまで。
つまり家族になるというのはどういった意味なのだろう。ジュードくん…いや、これからはジュードと呼ぶべきなのかな。ジュードが兄か私が姉か。そういう議題に移りたい。
そもそも家族になりたいというのは私たちが兄弟として扱われたいという意味であっているのか、からである。
結婚を前提におつき合いさせていただきたいという意味ならもっと考えることがある。
多分、エルが言っていたという話だから前者だろう、うん。そうでなければあっさりな告白にあっさりな答えをしてしまったわけで。
考える度に頭がぐわんぐわんする。急な展開に私の脳内キャパシティオーバーもいいところ。
よし、決めた。
目的はかなり変わってしまったけれど、やっぱりこれだけはやっておかなくちゃいけないらしい。
「ジュード…これからもよろしく、ね?」
ごめん、これで最後にするから
(次の日、私は旅にでた。)
2013.9/24
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