ガミガミパーティー

[heroine side]

結構不覚まで歯が届いてしまったらしく、ポタポタと点滴のように一定間隔で落ちていく様をまるで他人事のように眺めてしまった。これでもルルとは仲もいい方だと思っていたので致し方ないと思う。
私の代わりのように取り乱すのはエル。「うにゃー!?」と声をだして私とルルを交互にみている。とりあえず止血をしなきゃいけないと反射的に指を加えようとするがレイアに「だめだよ!」ととめられた。

「それじゃあばい菌が口からはいっちゃうかもしれないじゃん!」

ポウッと指先がともる。治癒術。別に自分でもできたことだけど。そういいたいが自分が自分に治癒術をかける可能性があるかどうかを問われたらそれはゼロに近い。レイアにファーストエイド、そしてそわそわしていたエリーゼからは念のためリカバーをかけてもらった。
「ありがとう」。素直に出た言葉にレイアは気分をよくしたそう。エリーゼはちょっと違うが。
彼女は腰に手を当ててむくれた顔を見せる。

「ファルスは自分のことを大切にしない節が、あります!」

「年頃の女の子なんだしもっと自分を大切にしなきゃー!」

「う…ご、ごめん……」

エリーゼはそんな空謝りじゃ許してあげれません!と怒る。これはこれはいいお姉ちゃんになりそうだ。何も言い返せない私を見かねてルドガーが助け船をだしてくれた。エリーゼがしぶしぶ押し黙るとこれを区切りに声が通路に響いた。

「また来たのか、クルスニクの一族よ……」

その姿も見せない声の主はオーディーンと名のる。この遺跡内の管理システムというがこれは次元のかけ離れている話だ。この遺跡、時の方舟トールといわれる場所はルドガーたちが探し求めているカナンの地につながる道標がある場所で。そのことについてはオーディーン自ら認めていた。

「知ってるの?自分が道標だって」

「それだけではなく、お前たちの弱点も理解している。これは忠告だ。おとなしく立ち去ってくれ──」

その言葉でまるで通信が切れたかのように音沙汰もなくなった。弱点を知られているということは他の分子世界のルドガーたちがここに来ているということだろうか。それなら分子世界のルドガーたちも各々の力量をもってカナンの地へ目指していることになってしまうけど。
いや、結果から考えると無理な話だ。
分子世界からのお尋ね者は大体の可能性で消える。本物の当事者がいる限りは偽物が存在できないという話になっていたはずだ。
ん、でも…、それって……。

「どういうことでしょう……?」

「会ってみればわかるわ。奥へ進みましょう」

ミラが奥へと進む。通路を進めば扉と思わしきものがある。どうやら物感知センサーのようなものがついているようで。私たちが寄ると自動的に開け放たれた。
中は狭い部屋で行き止まり。ああ、はずれか。なんて思いながら色々と物色。素晴らしいと思ったのはこのアイテムボックスと呼んでいいのか分からない入れ物だ。触ろうとしたら勝手に中身が出てきた。しかも腐食してない。鉱石ならともかく食べ物類が新鮮度を保たれている。これが人体に、世界に害を及ぼす危険がないのなら是非とも取り入れたい技術だ。冷蔵庫という黒匣の消費が可能となる。

他の部屋を調べると触れたら音が鳴る機械がたてられていた。それはまるで色んな歴史を物語っているかのように。
もう圧巻としか表現ができない。
でもこの規模とまではいかなくても微精霊の源霊匣を代用にして音を奏でることはできるかもしれない。
思いついた化学式を持ち歩いてるメモ帳に書き込んだ。

「何書いてるの?」

「この遺跡内のものを源霊匣で代用できないか考えてるのよ。大きい転送装置とかは無理だろうけど音を鳴らすくらいなら微精霊クラスでいけそうかなって」

質問したレイアはレイアで記事のネタをまとめているようだ。ところでここを題材にするのはいいけれどそんなのが新聞に載っかるのだろうか。ましてや分子世界の話であり、正史世界ではここにくることすらままならないというのに。
まあ、本人が楽しそうだから何もいわないけれど。



「でもこうなったら意地でも何か持ち帰りたいよね」



懲りない人
(ダメ!と息の合うパーティー)

2013.9/20


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