[heroine side]
ジュードくんと珍しくお出かけなう。と、いうのもルドガーが私を連れてきてほしいからなのだとか。トリグラフからディール行きの列車に乗り込む。ディールか…あまり縁のない街だなー…と思いながら窓側の席に座っている私は流れていく景色に没頭する。うとうとしちゃう。うとうと…うとうと、
「ほらファルス、もう着くから起きて」
揺さぶられて目を開けた。ジュードくんがよく寝てたねと余計な一言を加えて言う。無事駅に停車した列車。私は白衣のしわをのばすようにしながら立つ。周囲の目を気にすることなく伸びをし先をいくジュードくんを追うように進んだ。
「こっちだ」
手を振るルドガーの周りにはお連れの方々がたくさん。エル、ルル、ミラは勿論のこと、私の居た分子世界に来たメンバーにガイアスとミュゼまでも。完全フル活動なその様子にただ事ではない何かを感じ、素直に「どうしたの?」と訊いた。答えが返ってきたのは知らない女の子。ちょっと年上だろうか。
「ルドガー、この子が助っ人?」
「え、ちょっとルドガー。助っ人って何。何の話?」
呆れ顔のルドガーは口を閉ざす。変わりに銀行員だと言ったノヴァと名乗る女性が説明してくれる、取り立て先の相手の顔が滅茶苦茶恐いからなんとか協力してほしいとのことである。なんだそりゃ。
「パス」と答えた私は踵を返した。そんなことをするくらいなら私は地道に魔物でも狩って少しでも旅費を稼ぎたい。
「そんなのアルヴィンやローエンのほうが得意でしょ。なんでそんなことのために私を呼んだのよ」
「そ、そんなことって!私にしたら一大事な話なのに!」
確かに銀行員の仕事としては重大な話であろうが、他人の私情に一般市民を巻き込むのはいかがなものかと思う。まあ、私はこの世界の人間ではないのだから一般市民というカテゴリーからは外れてしまうかもしれないけれど、それでも迷惑極まりない。
久しぶりの再会とも言えるこの状況に肩を落としてしまうような出来事。
そもそもノヴァと親しげに話しているルドガーが手伝ってあげれば万事解決ではないだろうか。ルドガーを見れば首を左右に振られる。ああ、そういえばルドガーってそこまでうまく口が回らなさそう。いいように踊らされるイメージあるかも。
ところでさっきからエルがきょろきょろと町並みを気にしている様子が気になってしまう。ルルなら足下にいるというのに一体どうしたのか。ローエンも同じことを思ったのかエルに話しかけていた。
「ここ…パパと一緒に来たときある気する」
「エルさんの家が、この近くに?」
わかんないというエルに私は衝撃を走らせた。誰も何も言わなかったって事はもう皆は知っていたのかもしれないけれど、私はてっきりルドガーと年の離れた妹だと思っていたわけで。
「妹じゃなかったんだ……、」
たまにみる表情や仕草が少しばかり似ているような気がしていたのだけれど。それはルドガーの家で寝泊まりしていたからなのだろうか。
じゃあ私もジュードくんに似てしまう……?
ちらりとエルの話に耳を傾ける彼をみる。いやいやいや、私の性格がこれ以上お人好しになることはまずないだろうし、そもそもこれ以上似てしまうとするならば思考などの問題に至ってしまうかもしれない。
それだけは勘弁被りたい。私はジュードくんと似たいとは思わない。もともと性別の違いだけなはずなのに他の部分もそっくりだと言われてしまっては私の立つべき場所はなくなってしまう。同じ人間は何人もいらないのだから。
皆がヒメマストークをしている。ヒメマスか…確かに最近魚はとっていなかったかもしれない。肉野菜を重点的にとっていたからたまには魚料理も考えてみよう。
そして議題はウプサーラ湖。この世界のウプサーラ湖はもう何十年も前から干上がっているらしい。
どうやらエルの杞憂だったようだ。
エルは残念そうに落ち込んでいる。帰るべき家がなかったのだから落ち込むのも当然か。
「その湖の底ですっごい昔の遺跡がみつかったとか。黒匣とかと全然違う文化で、世紀の大発見ー!ってニュースになってた」
食いつく似た者同士
(そしてその存在に落胆する)
2013.9/16
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