言われるがままである

[heroine side]

もう一週間。ジュードくんとのコミュニケーションも何となくとれてきた。
まあ私が近寄らないでほしいオーラをだしたり私、思いを伝えるんだ環で色々言ってしまったのが原因だったりするのだけど。

あらかた片付いた本。ジュードくんの悪いところは同じ話が載っている本が何冊かあったこと。全く同じとは言えないが似たような話がまとまっているものを抜粋して、他は…悪いが処分させてもらった。だけどもよく読むところに付箋は貼らせてもらったし、追記として足りない文章はメモ帳に書いてはさんである。

なんだかんだこの一週間本を読んでジュードくんがよく読むところのしるしにマークしての繰り返し。
掃除炊事洗濯…家事と平行しての作業。本を読むのに時間はとられるが個人的にも研究の材料になるので悪い気はしていない。
ジュードくんも怒らなかったからと調子に乗ってしまった結果がこれだ。
資料のまとまったノート。私個人的に重要な論文をまとめただけだったがジュードくんに評価されてしまい、今は彼がよく持ち歩いている。


もう完治といった状態なので買い物がてらクエストで小遣い稼ぎにでもいこうかと思う。ジュードくんは夜帰ってくるだろうからそれまでに帰ろう。因みに自分の家の鍵とジュードくんの家の鍵はまるっきし同じ。合い鍵もいいところだ。
ルルに似たネコ柄のワッペンで穴のあいた背中が塞がれた白衣を着て家を出る。

リンクする相手もいなく私はちみちみとガルドと素材を集めながら魔物を駆逐して。そこまで強いとはいえない魔物相手はリハビリに向いていた。
ヘリオボーグで受けた依頼をトリグラフで完了させた私は余った素材を道具屋に持っていきお金にする。換金した額はそれなりで財布の中も上々。

「塵も積もれば大和撫子ー」

しーぬきで、いや死ぬ気で!とはこのことである。


食材調達に自分の衣服、好き勝手にできるのも勿論自分のお金だから。自分の世界の通貨と何ら変わらないのが本当助かるところ。
そうでなければルドガーにお金を返すことままならなかったろうし私の装備も購入できない。以前使っていたものは全てクレイン戦で駄目にしてしまった。まあ、次から次へと敵敵敵。グローブもボロボロになり果ててしまうだろうから余計な出費と思ってないけれど。

「おや、ファルスさんではありませんか」

紙袋を片手に歩いていたら前からローエンがやってくるのが見えた。こんにちはと言えば同じ言葉を返される。
お昼を過ぎたトリグラフの商業区はとてもお客さんで賑わっていて、私達はとりあえずその場を移動することにした。

(……って、なんで私ローエンと歩いてるんだろう)

私の知るその人ではないのに。その事実は認めたが受け止めきれてない。この距離感がもどかしい。私が生きているだけでまだマシなのよ、と言われてしまえばその通りなのだろうが……はっきり生き地獄だ。

「そういえばファルスさんはアーストという男性のことをご存じですか?」

「アースト?」

はて、誰だっただろうか。知り合いを虱潰しに思い返してみるがアーストと名のる男の人は思い出せなかった。まるで私も知っているだろうと言ったローエンはご存じないならそれでいいのですがと続ける。

「そのアーストって人がどうしたんです?」

「いえ、目を離した隙に居なくなっていたものですから。GHSで連絡したのですがましてや機械音痴な方ですからねえ……」

それはそれは。と相槌をうてばにっこりと微笑むローエン。その笑みは何の意味を持つのか。考えるまでもないだろう、そのアーストって人を探せばいいわけなのよね。
溜息を吐けばありがとうございますと先お礼を言われてしまう。



「まだ何も言ってないじゃない……、」



人捜し開始!
(で、その人の特徴は?)

2013.9/13


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