辿り着いた先の僕

[jude side]

僕達は分史世界のトリグラフに来ていた。
もう6回目となる分史世界の破壊。毎度の如く情報量の0な僕達は時歪の因子<タイムファクター>を探すべく町の人に話を聞くことになる。

どうやらこの世界でもヘリオボーグ研究所では源霊匣<オリジン>の開発に勤しんでいるらしい。その完成率は90%、正史世界よりも実用化の話が進んでいるようだ。
僕たちの世界と何ら変わらないこの世界での違いといったらこれくらいだろうか。それにしても今までの分史世界みたいにはっきりとした違いが見つからない。多分ヘリオボーグ研究所はハズレだろう。

一通り回った僕はルドガーのマンション前で一息つく。空いていたベンチに腰をかければ白衣のポケットが揺れている。そういえばGHSをマナーモードにしたままだったようなと取り出してみればルドガーから三件電話があったみたいであわててかけ直した。

「どうしたの、何かわかった?」

訊くところによるとレイアのGHSに変なメールが届いたらしい。その内容はレイアの居場所を教えてほしいとのことだったとか。メールの送信者の名前はファルス。残念ながら僕にも聞き覚えのない名前だった。

「もしかしたらその人が時歪の因子……?」

『まだその確証はないけど会ってみる価値はある』

クラン社の前で待ち合わせた僕はもう合流し始めている皆の元へと向かう。
道中見かけたGHSを耳に当てている少し大きめな白衣を羽織った僕とそう変わらない身長の黒髪少女。

「分かっていますよクレインさん」

そう笑う彼女の口からでた単語が僕の動きを止めた。クレイン。それはクレイン・K・シャールのことなのか。立ち尽くす僕を余所に彼女はトルバラン街道の方へと進む。
追いかけるべきかと悩んだがとりあえずルドガーたちの元へと向かうことにした。もし僕の思うクレインさんだとするならばきっと領主邸にいるはずなのだから。


「おそいよジュード!」

「ごめん。でもその代わりに正史世界でなら聞くはずもない名前を聞いたんだ」

エルは待ちくたびれてしまったらしくアイスキャンディーを頬張っていた。
べたべたしている彼女の口元をルドガーが拭ってあげる。それを横目に「なにを訊いた?」と言いたげなアルヴィンの顔。
クレインという名前のことを話した。ルドガーとエルは首を傾げていたがそこは執事であるローエンが簡単に説明することになる。ミラさんは分かっているようだったから多分ミラさんの世界でも似たような結末を辿っていたのかもしれない。

「じゃあクレインが時歪の因子ってことか」

「えー。でも私のこのメールは何だったんだろ、すっごく気になるよー」

ずいっと視界に押しつけられるレイアのGHS。ごめん、近すぎてなにも見えない。
手を取ってみるとやっぱり見たことの聞いたことのない名前だ。
レイアに返してアドレス帳の確認を促した。
僕が見るわけにはいかない。いくら幼なじみでも個人情報を筒抜けにしてはいけないわけだし。レイアは言われるがままにアドレス帳を検索する。目が大きく瞬いたという事は多分その人のプロフィールが載っていたのだろう。

「うそ……、ジュードそっくりだ…」

プロフィール画像には確かに僕と同じ琥珀色の目をした黒髪の人が写っていた。だけどセミロングくらいのその人は何というか僕より細身に伺える。皆が次々にのぞき込む中で冷静にため息をついたミラさんは蔑むような目でこの場を収拾した。



「ちょっと…その子女の子でしょ。ジュードそっくりって失礼じゃない」



瓜二つの女の子
(そういえばさっきすれ違った子に似ているような…、)

2013.8/11


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