皆揃えば恐くない!

[heroine side]

私はどちらかというと猪突猛進タイプだ。
思い立ったらすぐ行動。考えなしに突っ走るが大体なんとかなっている。
それは私が思いついた案件を他人に譲渡しているからであり、その後行き詰まったりしても立ち会うことなどない。中途半端な研究も指折りで数えれるほどある。
私は提案しただけであり、命令ではない。勿論相手もそれを理解を得た上での行動だ。私自身源霊匣の研究で手一杯なのだから仕方ないでしょう…とまでは言ったことはないが現状そのような感じではある。
つまり言うところの自分勝手な女だ。

そんな私は人見知りが激しいタイプ、昔はよくいじめられていたもんだ。
そのたびにレイアが助けてくれた。
だから私もレイアのお母さんが教えてくれたこの拳でレイアを守る、そんな仲だ。

「久しぶりだな、こうやってファルスと取っ組み合いするなんて!」

「取っ組み合いっていうか喧嘩、だね!」

言葉は軽いが攻撃は本気そのものである。私の拳はレイアの服をかすめ、レイアの棍をすんでのところで避ける。おいうちをかけるような飛び交う銃弾に詰め寄っていたレイアから距離をとらざるを得なかった。

「……飛び道具使える人間に生まれたかったよ」

銃口から漏れ出す煙の臭いに眉をしかめる。
こちとら近距離で戦う人しかいない、つまるところ同じ人間が二人居るような者なのだから仕方ない話か。
こう思うとアルヴィンの銃は物凄く邪魔である。

現在アルヴィンと対峙しているのはジュードくん。彼だって何も弱いわけではない。むしろ私よりも強い感じがする。まあ私の場合研究メインであまり体を動かしてなかったからと言う言い訳があるわけなのだけど。

(よし、ジュードくんレイアの相手をお願い!)

「えっ……!?」

振り向くジュードくんを押しのけるようにアルヴィンへ体当たりをかます。どしゃっと尻餅をついた彼に馬乗りで固定する。羞恥?いや、それは確かにあるけれど。どんな形でも勝利は勝利!私やっぱりダークヒーローにだってなれちゃうかも。

緩い固定なんて固定の意味をなさない。
私の体重でアルヴィンの身動きを防ぐことなどとうてい無理な話なのは自分自身理解していた。
身じろぐ動きも一切見せない彼のおでこに私のおでこをくっつける。すでにレイアもジュードくんもこの状況のせいで戦う気力も失ってるみたいだ。こっちに視線釘付け状態。

「なんだよ、再会のキスでもくれるわけ?」

「キスはあげないけど、」

落ちてくる髪の毛を耳にかけて彼のおでこから少し離した。笑いかければ同じ様な笑みを浮かべるアルヴィン。
そんなアルヴィンへのご褒美、とくと受け取ってほしい。
そのまま勢いよく振り下ろした自分の前頭部。

「「おおおおお……っ……、」」

じーんとした痛みに自分自身も悶絶した。
何すんだよってキレる彼にお仕置きと返した私はそそくさと彼から降りた。いたたた、頭がぐわんぐわんと響いている。
レイアに対してもこれくらいのことしてあげたかったけど仮にも女性だ、んなことできやしない。
ずきずきと痛むおでこを手で押さえながら唖然としてるジュードくんの隣まで戻る。多分彼ならこんな無茶しない、彼ならきっと否が応でも口論でなんとかするだろう。

「私は単純でバカだから自分の決めたことは曲げたくないと思ってる。……でも、でもそれ以前にアルヴィンもレイアもこんなことに関わってることを一言も言ってくれなかったことにすんごく腹が立ってる」

私たち仲間でしょ。皆危ないことしてるのに一人だけ置いてけぼりだなんて、そんなのひどい。ひどすぎる。
アルヴィンもレイアもそれに関しては押し黙っていた。その顔からは少なからず反省しているようで。

「私はこの世界を壊すよ。壊して皆と死んでやる。私がこの世界の裏切り者だって言うのなら私を裏切った皆だって裏切り者なんだからお互い様だよね」

クレインさんを殺すとこの世界は終わる。
私ではできないけどルドガーなら。ルドガーならこの分史世界を終わらせることができる。私は自分勝手な女だから死ぬときだって皆と一緒がいいとか思ってしまうわけで。



「でも、壊れる前に二人と話せてよかったよ」


最愛の二人にハグを
(最後まで皆一緒に、ね?)

2013.8/29


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