生死を分かつ世界

[Jude side]

アルヴィンとのリンクがきれた。
いや、きられたが正しいのか。アルヴィンの表情が青ざめたり、困惑したり、滅多にみないその状況。エリーゼが首を傾げてアルヴィンの名前を呼んでいた。
ファルスさんは万年筆を大切そうに見つめて白衣のポケットの中へとしまった。まさか万年筆が首にあてられていたなんて。万年筆一つでファルスさんはルドガーに全てをはかせた。
事実を知った上で手伝ってくれるらしい彼女は今怪しい行動はしてこない。
ただこれは個人的な見解だから何ともいえないけど彼女の知り合いに対する態度と知り合ったことのない人に対する態度、明らかに違うような気がする。
こればかりはどうにもならないだろうけど。むしろ僕たちがこういう事件に巻き込まれすぎて感覚が麻痺しているのかもしれない。ミラさんの時だってすんなりと会話ができるようになった。……まあ、ミラさんの場合僕たちと知り合ったことがないからすんなりと接することができたという事も考えれるけど。


僕はあまり気にしないでこれからのことを考える。
カラハ・シャールにたどり着いたとして時歪の因子の可能性が高いクレインとドロッセルをどう引き離すか、ということである。
領主邸との交流関係はどうなっているのか把握もできていないのだ。
ファルスさんはどうやらクレインと親しげな様だけどこの世界での皆はどうだったのだろう。ローエンは執事として生きていたのか、それともガイアスの側近として生きていたのか。

自他認める苦手意識を高く持たれてしまった僕からは話をかけにくい。
ローエンに相談して、そのままの言葉を伝えてもらった。

「ファルスさん、この世界での私たちとはどのような人たちだったんですか?」

「……どして?」

「会話がかみ合わなかったら怪しまれてしまうのはあっという間ですよ。そうしたら貴女もすぐに巻き込まれてしまうかも…とジジイの直感が言っていました」

楽しそうな笑みを浮かべていた彼女はローエンの言葉に考え込む。
そして簡潔に説明をし始めた。

「ルドガーとエル、ジュードくんは私の知り合いではないから対象外ね。私の知るミラは今こっちに来ていないはずだから何ともいえない。えと…アルヴィンは小さな商人、一応頑張っているけれどまだまだ名前は知り渡っていなさそう」

「何かムカつく言い方だな」

「でもコアなリピート客がいるからなんとかなっているはずだよ。レイアは駆け出しの記者だね。まだまだ記事は載せてもらえてなかったけど一生懸命取材をしてたよ。たまにおもしろい目線からの発想をしていた気がする」

「え、見たの!?」

「さらっと読んだけど…相変わらず独特な字を書くというか何というか……内容よりも字に圧倒された記憶があるな」

次々と飛び出す言葉は大体僕たちの知るものと変わらない。若干の違いはあるがそれは環境によるものもあるし。

「ローエンはなんだろう、ガイアスの宰相をやっていたのを見かけたと思ったらクレインさんの隣で執事生活を満喫していたり。むしろこっちが訊いてみたかった」

「ローエンすごーっ!王様とクレインってひととカケモチしてたってことだよね!」

「エリーゼはクレインさんのところから学校に通ってるよ。こっちではティポは仕舞われっぱなしなはずだけど」

「こっちでもドロッセルと一緒なんですね……!」

「よかったー!」

エリーゼとティポの反応に表情をなくしたファルスさん。少し困ったような顔をして視線をあちこちにさまよわせる。それが何を意図しているのか、予想はついているけれど。エリーゼがティポが、困惑した表情で首を傾げた。



「こっちのドロッセルは、もう死んでいるの」



兄妹の生死
(エリーゼの悲しむ顔が胸に痛んだ)

2013.8/24


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