『六月…なんだかそれってまるで毎日が半田君の日、みたいですね』
そう言ってふんわりと笑う彼女はクラスの中でも美少女としてちやほやされていることで有名な名無し。そんな名無しが何で俺なんかと話をしているかって言うと、小学校からの…しかも今まで七年間ずっと同じクラスだったからだったりする。
「なんで毎日が俺の日なんだよ?」
首を捻るが思いつかない。六月…だよな。考えられるとして今も降り続けているこの雨、梅雨……とか?いや、別に雨を降らせるわけでもないし……。毎回テストでも微妙な点数しかとれないのに名無しの言ってる意味なんかよく分からないっつーの。
『だって、【6】なんですよ?』
「………だから?」
キラキラと輝かせてそう言う名無しに、本当に分からないんだけど。そう言った雰囲気で返してやると『まさか、本当に分からないんですか?』と大きなため息を目の前で吐かれた。
………結構、可愛い子にため息を吐かれると悲しくなるもんだな。
『昨日も今日も雨は降っていましたけど忘れちゃいけないんですよ、半田君!』
言いながら彼女の指の先が向いたのは俺の背中。
ああ、そっか。名無しが言いたいのはあれか。
「俺の背番号……?」
『そう言うことですよ!』
全く……自分のことなのに気づくの遅いですよね?そう笑いながら背中をツンツン突っついてくる。嫌じゃないけどくすぐったい。
『そ、……そんな半田君に御褒美でもあげたいんですが良いでしょうか?』
「あ…うん?」
そんな半田君に……って俺、なんもしてないんだけど。まぁ、御褒美をくれるって言うならもらいたい。
いつになったらくれるんだろう?そう思って彼女を見つめると何故か耳までまっかっか。どうかしたのか。そう聞くと、『目を瞑ってなきゃ御褒美をあげることができませんよ!』と口を尖らせる姿が。
「分かった分かった。瞑ればいいんだろ?ほら、」
早くしろよな。ぎゅうっと目を瞑る。うわ、視界が真っ暗になると聴力がよくなるって本当なのかもな。名無しが小さく『よし、自分にファイトだ……うん、いけますよ、私!』と呟くのがよく聞こえた。
そして次に地面に靴を擦らせる音。勿論褒美をくれるためだろう、俺に近づいてくるのがよく分かる。
『……半田君、少し屈んでくれませんか?今の私の身長じゃ貴方に届かないんです。………悔しいですが』
昔は私のほうが大きかったのに…残念です。その声から少なからず悔しがっているのは見なくても分かる。これも七年間という年月の中一緒のクラスだったからなのだろうか。そう考えていると『早く屈んでくださいよ!』と渇が入る。
「ほら、はやくしろよ」
しゃがんで再度、目を瞑った。全く……ただのクラスメイトだったはずなのになんで俺ってばこんなに命令されてんだろ。
そんな事を考えていたら首もとにひんやりとしたもの。
………そして、
『好きでした、半田君』
唇に柔らかい感触。
「えっ……?」
『もう……昔から色々アプローチしてきたのに気づかない半田君には半場呆れていたんですからね?』
真っ赤にしたままはにかむ彼女。でも、【好きでした】って………。
「なぁ、名無し」
『なんですか?』
「今はどうなんだよ?」
そう問うと、その言葉を待っていました。とでも言うような笑み。返ってきた言葉を聞いて俺は優しく抱き締めた。
勿論、好きに決まっているじゃないですか
((君の行動が見なくても分かったのは多分昔から君の事を追っていたからだと思う。……それも自然に、))
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