『また…、』
携帯の着信音が鳴り響いた。
相手なんて見なくても分かる。
基山ヒロト。隣のクラスの人気者だ。風介の友達らしくて、ちょうど昼休みに風介とお話をしていたら基山がやって来てそこで知り合ったという、友達ともなんとも言えない関係なはずだ。
「オレは基山ヒロト。ねぇ、君の名前は?」
「ヒロト…!」
『私は名無しの名無し。風介に用事?なら私は外れるけど』
「ううん。オレは名無しに用があったんだ」
『私?』
「うん。メアド交換してくれないかな」
最初はいきなりだったから意味が分からなかったけれど耳元で風介の事で内密に話したいと言ってきたので了承した。そう、私は風介のことが好きだから。
「ありがとね。じゃ、あとで」
『あ、はい』
メアドを教えるなり簡単に引き下がってくれた基山くん。私が風介に好意を抱いていることを知っているのだろうか?
基山くんがいなくなったこの教室の中で風介が眉間にシワをよせていたのが気になり声をかけてみた。
『風介…私、なんかしたかな?』
「いや……。だけどアイツには気を付けろ」
『アイツ…って、ああ。基山くんね。大丈夫よ。私、好みのタイプは基山くんみたいな人じゃないから』
「そういうことじゃないんだが……。とにかく、アイツがらみで何かあったらメールしろよ」
『うん。分かったよ』
風介が心配してくれたのはこの事だったようだ。
鳴り止まない着信音。どんどんたまっていく未読メール。風介に連絡したくても受信中と表示され、一向に送ることができない。
恐くて恐くて携帯の電源を切ろうと考えたけどその前に一通だけ見てみようかと思い、適当に開いてみた。
『……なっ!』
添付ファイル付きのそのメールは「こんな姿も可愛いね」と一言、そして私が制服から着替えている途中であろう写真が載せられていた。
『なにこれ…、まさか他のも……!?』
気づけば他のメールも添付ファイル付き。半信半疑で開くと、また私が撮られていた。
ひっきりなしのメール
(もしもし、名無し。大丈夫か?)(ふーすけ……。恐いよおおお!)
2011. 5.12
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