『総司ってRPGとかに出てくる裏ボス的な何かだと思った』
カチャカチャとPSPをいじりながらそう言うと、総司は空を見上げていた顔を此方に向けた。とても不思議そうな顔で、今にもなんで?と聞いてきそうな顔だ。
「裏ボス的ななにかって結局なんなの?」
『うーん…、何らかの条件を満たさなきゃ戦えないっていう感じのなにか』
屋上で寝そべりながらゲームをやる。毎週木曜、二時間目の時間は土方先生の授業ということもあってめんどくささを見積もってサボっているのだ。それはそれは、ただ単に自分勝手なんじゃないかっていうやつもいるんだろうが、テストだけはきちんとやっているんだ。いいじゃないか。
そんな自分と同じ考えだったのかそうじゃないのか。真意は分からないけど沖田総司も屋上にやって来るようになった。
最初の頃は総司がペラペラしゃべっているのも無視をしていた自分だったが、たしか土方先生の悪口の話だっただろうか。その時に口を開いてしまった。
因みに自分から見た沖田総司という人は、腹黒で独占欲が強そうな遊び人。だからこそ、信用のできなかった自分はこの人と関わることを否定し、無視し続けたはずだった。
「名無し」
「なにさ。今、ボス戦なんだけど」
□やら○やらのキーをガチャガチャ乱暴に押しながらコンボを稼いでいると、集中の妨げでもする気満々だったのか自分の耳元でこうやって囁いた。
「僕、名無しのことが好き。………かもしれないさ」
『はあぁあぁぁ!?』
ついつい、反射神経かなにかでスリープモードにしたまま総司の方をおもいっきり振り向いた。ざあぁと涼しい風が自分と総司の間を通っていくのにもかかわらず、自分の頬は今だ熱い。
「名無しの表情、すごいね。今の表情は初めてみたよ」
『う、うるさい!からかっているんなら話しかけるな!!』
「本当なんだけどなぁ……ってね」
そう言った彼と自分の影が重なりあう。ちぅっと自分のおでこに柔らかいくち…くちび……唇が……。
『あ、あぁ…あああ!』
あてられたところを手で覆い、口をパクパクと開閉させながら目を見開くことしかできない自分は、ただただ固まるばかりだった。
ちょうど、キンコーンとチャイムがなり、目の前の彼はゆっくりと立ち上がった。
「さてと、来週からはゲームに夢中にならないで、僕に対して夢中になってよね、名無し?」
『なっ…ななな、なんでキスなんか!』
校内へとつづくドアノブにてをかけて、ちらりと彼は振り返る。その顔はとても楽しそうでいて、自分はまるで彼の玩具かなにかかと思えるなにかですか?
「さっき言ったでしょ?」
名無しのことが好きかもしれないって
(頑張って僕を振り向かしてみてよ。ゲームが得意なら……、できるよね?)(………やってやろうじゃない!)
(自分は以前から貴方に振り向いているけれど)
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