歯車が狂いはじめる

平凡ってなんだろう。私はそう考えることしかできなかった。
平凡とは、こんなにもむなしいものなのだろうか。

私の平凡は、あと七日で終わってしまう。なんて他人事のように言うが言われた本人はどうすればいいのだろう。





歯車が狂いはじめる





『え……、』

聞き返さずにはいられなかった。私が生きられるのはあと一週間が限度だ。なんて言われて驚かないほうがどうかしていると思う。

驚いたのは私だけではなかった。教えてくれた掛かり付け医の先生も驚いていた。先生曰く、前から出していた診断通りで親にはすでに伝えていたらしい。

「親御さんがたからは何も聞いてないのかい」

その言葉が私の耳に響いた。
本当にあと一週間しか生きられないらしい。どうやって生きよう。もう皆みたいに将来のことを考えなくていいなんてハッピー。って気楽に考えてみようか。

そう考えたら涙が出た。
友達と一緒に高校すらいけないなんて。いままで嫌いだった勉強をします。一番苦手な体育にだって仮病を使わず参加します。

だから、だからだから……。


『私を生かしてください……』


涙ながらに洩らした言葉は先生の耳にも勿論聞こえたことだろう。

だけど先生は何も言わず、ただひたすらに私のレントゲン写真を見ていた。



私は、もう生きる資格を失ったのだ。





『聞こえるのに』

手を押さえればどくんどくんと一定のリズムが鳴っている。胸の爆弾はかわらずそこで震えているというのに。一週間後には止まっているらしい。

『皆、泣いてくれるかな……』

葬式に来てくれるかな。骨を拾ってくれるかな。泣いてくれる…とは思う。感情移入が激しくて涙もろい友達が多いもん。でも、生きる気力も失った私に涙を向けてももったいない気がしてきた。

ああ、そうだ。
この最後の一週間は今までの私じゃ味わうことがなかったことをして過ごそう。

『皆が私のことを嫌ってくれたら』

葬式に来ない。骨を拾うこともない。私に涙を向けてくれることもない。中学二年のこの日々に悲しむ奴なんて出なくなるのだ。もう少ししたら宿泊研修もあることだし、悲しまれては困るかもしれない。





『まあ、後世に興味はないけど』
明日からトモダチとはバイバイしよう。

2011. 7/30


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