『円堂円堂!』
いつもなら言うおはよーの言葉も無しに円堂の机の前に立った名無しは、いつに無く息を切らしていた。
「なんだよ、名無し。そんなに急いで何かあったのか?」
円堂はそう口出したのだが、悪い話ではないことは理解している。悪い話だとしたら目の前に立っている彼女が「待ってました!」とでも言うような表情を見せるはずがないからである。
『お父さんから聞いたんだけどね、今日って【さやえんどうの日】なんだって!』
「さやえんどうの日?」
唐突にさやえんどうと言われても意味が分からない。それでも名無しにしては珍しく大きめな声で一生懸命説明してくれているのだから聞かないわけにはいかない。
円堂は名無しの次の言葉を待つことにした。
『ほら、今日って三月八日じゃない?三と八で【さ・や】なんだって言ってたの!』
「おお!……で、それがどうかしたのか?」
確かにさやえんどうの日が今日という理由は分かった。けど、たったそれだけの話でここまでテンションが上がるだろうか。
俺だったら〜……と考えてみたが、さやえんどうが特に好きといったわけではない円堂は彼女の反応が分からずじまいだった。
『いやー…特に意味はないんだけど【さや】を抜かしたらえんどうだったから円堂に一番最初に教えてあげたかっただけなんだよね』
「名無し…、」
さやえんどうの日。
その【さや】を抜かしたらえんどうの日。つまり漢字変換をすると円堂の日。
目の前の彼女は、円堂の反応が薄いから迷惑かけたのだと慌て、そして頭を下げだす。
『朝っぱらからごめんね。こんなテンション高くて』
「いや、一番に教えてくれて嬉しいよ。ありがとな!」
円堂の日。だなんて、別に今日が誕生日ってわけじゃないけど、だけど今日からはなぜか三月八日が特別な日になる。そんな気がした。
『ううん、此方こそ聞いてくれてありがとう!』
パアアッと笑った彼女はいつものように俺の隣の席に座った。
そしていつものように放課後がやって来る。
さあ、今日もサッカーやろうぜ!
さやえんどうの日。
(【さや】を抜かしたら円堂の日!)(まるで円堂の特別の日みたいだなって思っただけなの)(誕生日と円堂の日。年に二回楽しめるだなんてちょっと羨ましいな)
……滅茶苦茶な内容orz
2011/03/08
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